其れ其れ(読み)ソレゾレ

デジタル大辞泉 「其れ其れ」の意味・読み・例文・類語

それ‐ぞれ【×其れ×其れ/夫れ夫れ】

複数の物・人の、ひとつひとつ・ひとりひとり。おのおの。めいめい。副詞的にも用いる。「―が自分の道を選ぶ」「地方によって―習慣が違う」
[用法]それぞれ・おのおの――「持っていく荷物のそれぞれ(おのおの)に名札をつける」「切符はそれぞれ(おのおの)自分で持ちなさい」のようにひとつひとつの意では相通じて用いられる。◇「それぞれ」は、「人それぞれに好みが違う」「映画も芝居もそれぞれ魅力がある」のように、複数の人や物の個々を異なるものとしてとらえる傾向がある。この場合に「おのおの」を使うのは適当でない。また、「それぞれ」は人や物だけでなく事柄についても用いて、「料理、洋裁それぞれに才能を発揮する」などという。◇「おのおの」は、「会員のおのおのが意見を言った」「出品されたどの作品もおのおの力作である」のように、ひとりひとり、ひとつひとつを同列に扱って、個を含んだ全体という意味合いがある。◇類似の語に「めいめい」がある。「めいめい」は、人についてのみ使う。全体を問題とせず、ひとりひとりという意味で使う。「切符はめいめいお持ち願います」
[類語]各各個個別別

それ‐それ【×其れ×其れ】

[感]
人に注意を促したり、行動を促したりするときに用いる語。さあさあ。「其れ其れ、早くしないと間に合わないよ」
相手の意見に同意するときに用いる語。そうだそうだ。「其れ其れ、そのとおり」
[代]遠称指示代名詞。複数の事物や人を指し示す。かれこれ。だれかれ。
「今めかしきは―とり整へさせ給ふ」〈絵合

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精選版 日本国語大辞典 「其れ其れ」の意味・読み・例文・類語

それ‐ぞれ【其其・夫夫】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「それそれ」とも。代名詞「それ」を重ねた語 ) めいめい。おのおの。
    1. [初出の実例]「喩ば鳥は飛に宜きやうに羽を以て、魚は水に宜きやうにひれを付る也。如此それそれの宜き所をうるを、義の和とは云也」(出典:応永本論語抄(1420)子罕第九)
    2. 「出家になれば、それぞれの法をつとめ、経・だらにも覚ねばならず」(出典:狂言記・拄杖(1730))

其れ其れの語誌

( 1 )各自」の意味を表わす語として「おのおの」「めいめい」「それぞれ」等があるが、「おのおの」は平安時代に生じ、「面々」から転じた「めいめい」は中世に発生したのに対し、「それぞれ」は最も遅れて室町時代中頃から見え始める。
( 2 )「おのおの」「めいめい」は専ら人について用い、対称の用法も持つのに対し、「それぞれ」は人にも事物にも用いるが、対称の用法はない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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