内省ともいい,みずからの意識体験をみずから観察すること。本来意識体験は私的な性格をもつものであり,自己観察によってしか観察されえないものである。ブントやティチナーの心理学は意識の構成要素やその属性を明らかにするために内観を唯一の方法とした(構成心理学)。しかし心的生活は意識体験のみでないこと,乳幼児は意識体験を正確に言語報告できないこと,内観によって得られる資料に客観性,公共性が欠けることなど限界があり,行動主義心理学の隆盛下では内観による研究は著しく減少した。現在では,人格心理学や臨床心理学などが人間の意識現象を取り上げざるをえなくなるにつれて,内観による意識体験の報告がさまざまの形で心理学の研究対象となっている。また日本独自のものであるが,この内観を心理療法として組織化したものに内観療法(内観法)がある。これは,1930年ころ吉本伊信(いのぶ)が浄土真宗の一派に伝わる求道法を土台にして創始したものである。
執筆者:児玉 憲典
中国で行われた道教の観想法の一つ。内視,存視,存想ともいう。道教では,身体諸器官には天上の神々の分身である体内神が宿って生命活動を維持統括しており,死は体内神の身体からの離脱によると考えた。そこで,体内神の名字をとなえ,その服色姿形を観想することで体内諸神との交感を果たし,その離脱を防いで不死を実現しようとする内観法が行われた。その代表的経典としては《黄庭内景経》がある。
執筆者:麦谷 邦夫
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心理学の研究法の一つ。フランスの哲学者デカルトが物質と精神の二元論をたてて、物質の研究法は外部観察であり、精神の研究法は内観(内部観察)であると主張して以来定着したもので、内省、自己観察ともいう。現在進行中の心的過程を観察する同時的内観と、あとから想起する追想的内観とに分けることができる。ドイツのブントの構成主義やウュルツブルク学派は内観法を重視したが、アメリカのB・ワトソンの行動主義は、被験者の心的過程(意識)は実験者が客観的に観察しえないものだという理由で、科学的心理学の対象から除外した。しかし、主観的な意識は内観しうるものであり、言語報告によって公共的な研究の素材になりうるものであるから、これを除外するのは心理学的研究の領域を自ら狭めることになる。現象学的研究はもちろん、社会心理学、臨床心理学などの領域でも、被験者の内観による情報を求めることが多く、近ごろでは意識のさまざまな状態そのものが研究の対象になっている。
[宇津木保]
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…14年,万朝報退社,16年《洪水以後》(まもなく《日本評論》と改題)創刊。2度目の世界旅行の後は,20年発刊の直接購読雑誌《内観》により,支持者に支えられて評論活動を続ける。一時ファシズムへの傾斜もみせたが,基本的には韜晦(とうかい)の姿勢を貫いた。…
…本来意識体験は私的な性格をもつものであり,自己観察によってしか観察されえないものである。ブントやティチナーの心理学は意識の構成要素やその属性を明らかにするために内観を唯一の方法とした(構成心理学)。しかし心的生活は意識体験のみでないこと,乳幼児は意識体験を正確に言語報告できないこと,内観によって得られる資料に客観性,公共性が欠けることなど限界があり,行動主義心理学の隆盛下では内観による研究は著しく減少した。…
※「内観」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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