仏の身体の意。仏の身体とは何かについては、仏教徒の間でさまざまな論議、考察が行われたが、これを仏身論という。ゴータマ・ブッダ(釈尊)自身は、真理(法)を信ずる立場にたち、自己の身体は消滅するが真理は不滅であると主張し、自己なきあとは法を燈(ともしび)とし、法に頼れと遺言した。弟子たちは、この法を釈尊の人格を通して信奉したので、これを法身(ほっしん)とし、釈尊の肉身を現実の身体とみて、これを生身(しょうじん)とし、二身説を主張した。その後、大乗仏教の時代に入って諸仏がたてられたが、仏身論も二身説から三身説、四身説ないしは十身説へと発展した。なかでも法身(ほっしん)・応身(おうじん)・報身(ほうじん)の三身説が有名である。(1)法身は永遠不滅の真理(法)を身体とする見方である。(2)応身は仏陀(ぶっだ)の現実の身体をさすが、大乗仏教では、その身体は真理(法)が衆生(しゅじょう)救済の目的をもってこの世に出現した、通常人を超えた身体との見方を示した。仏陀の遺骨(仏舎利(ぶっしゃり))が特別に供養(くよう)・崇敬される背景には、この応身の考え方がある。(3)報身は法身、応身を統合したような身体論であり、単に永遠の真理そのものでもなく、また単に無常な人格でもなく、修行の結果、真理を悟った果報を得た身体の意味であり、永遠なる真理の生きた姿という意味である。さまざまな論議をよんだ仏身論は、仏教における人格信仰の発生を示すもので、本来の真理信仰との整合をいかにするかについて、苦心の跡を示すものでもある。
[坂部 明]
仏の身体。釈尊(しゃくそん)(ブッダ)は,通常の人間とは異なる,仏だけの優れた32の身体的特徴と80の小特徴を持つとされた。釈尊の滅後に,永遠の真理の体現である法身(ほっしん)(dharma-kāya)と,現実の肉体をもって生きる色身(しきしん)(rūpa-kāya)とを区別する二身説が成立した。大乗仏教になると,真理そのものを体現した仏の本身(法身)と,菩薩(ぼさつ)としての修行の果報として得られる報身(ほうじん)(saṃbhoga-kāya)と,衆生(しゅじょう)を救うために相手に応じて種々の姿でこの世に現れる仏の現身としての応化身(おうけしん)(nirmāṇa-kāya)の三身説が出現する。唯識(ゆいしき)学派では,自性身(じしょうしん),受用身(じゅゆうしん),変化身(へんげしん)という解釈を設定する。普遍的存在であるとともに,各場面で適切に対応し出現する仏身の性格に関する考察は,四身説や十身説,さらには密教の多身説へと複雑な展開を示した。
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