日本大百科全書(ニッポニカ) 「再評価積立金」の意味・わかりやすい解説
再評価積立金
さいひょうかつみたてきん
capitalization of revaluation reserve
資産再評価法(昭和25年法律第110号)に基づく固定資産の再評価により計上された評価替剰余金のこと。会計計算的には、各固定資産の取得原価と再評価額との差額を意味する。法制定当時の当該施策の背景には、第二次世界大戦直後の急激なインフレーションによる減価償却の実態との乖離(かいり)の問題があり、再評価後の金額を基礎とした減価償却費の計上により設備投資の促進を図る産業刺激策の目的で実施された。1950年(昭和25)に続いて、1951年、1953年と3次にわたる資産再評価が実施されている。再評価差額は、前述の目的から評価益とはせず、資本準備金に準ずる再評価積立金とし、その後資本金へ組み入れることを励行した。なお、1998年(平成10)3月に、議員立法で3年間の時限立法として成立した土地再評価法(正式名称は「土地の再評価に関する法律」。平成10年法律第34号)でも、固定資産の再評価により生じた差額を資本の部に「再評価差額金」として計上することとされた。しかしその目的は、バブル崩壊後の不良債権等による損失の後始末に利用するための評価差額の捻出(ねんしゅつ)に重点が置かれた点で、剰余金として計上される一般的な再評価積立金とはその利用目的の性質で異なっているといえる。
[近田典行]