(読み)チュウ

デジタル大辞泉 「冑」の意味・読み・例文・類語

ちゅう【冑】[漢字項目]

[音]チュウ(チウ)(漢) [訓]かぶ
かぶと。「介冑甲冑かっちゅう
[補説]「ちゅうあとつぎ)」は別字

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「冑」の読み・字形・画数・意味


9画

(異体字)胄
9画

[字音] チュウ(チウ)
[字訓] かぶと・よろい・よつぎ

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
兜の上の、飾(ぼうしよく)をも含めた全体の形。金文の字には下に目を加え、目深く頭にるものであることを示す。〔説文〕七下に「兜(とうぼう)なり」とし、由(ゆう)声とするが、由の部分は、鉢型の(かい)と、その上の飾を合わせた形で、由ではない。金文の〔小盂鼎(しよううてい)〕の賜与に「貝冑一」とあり、〔詩、魯頌、宮〕にもその名がみえる。〔説文〕(肉)部四下に、別に「胤(いん)なり」と訓する字があり、由声とする。下部がに従うものとすれば別の字であるが、おそらく冑の字の異形であろう。冑胤の義には、〔書、舜典〕〔国語、周語〕など、列国期に入ってからの用例があり、元冑・首子のような語から考えると、冑の義より分岐した用法であろう。いま同じ字として扱う。

[訓義]
1. かぶと。
2. よつぎ、あとつぎ、長男。
3. 国語で、よろい。

[古辞書の訓]
和名抄〕冑 賀布度(かぶと)〔名義抄〕冑 カブト・タネ 〔立〕冑 ヨロヒ・タネ・カブト 〔字鏡集〕冑 カブト・タネ・ウシロナリ

[熟語]
冑胤冑裔・冑科・冑甲・冑子冑嗣・冑緒・冑族冑閥
[下接語]
胤冑・英冑・裔冑・華冑・遐冑・介冑・鎧冑・冠冑・貴冑・甲冑・高冑・支冑・氏冑・世冑・貝冑・名冑・免冑・門冑・余冑

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「冑」の意味・わかりやすい解説

冑/兜 (かぶと)

頭にかぶる鉄製武具古墳から出土する甲(よろい)には短甲挂甲(けいこう)の2種があり,冑にも衝角付冑(しようかくつきかぶと)と眉庇付冑(まびさしつきかぶと)の二つがある。形の上で衝角付冑は短甲に,眉庇付冑は挂甲に属するものと思われる。しかし関東地方出土の挂甲着装武人の埴輪に見られるように,ほとんどすべてが衝角付冑をつけており,古代の2種類の甲と冑との所属関係はかならずしも固定的なものではない。むしろ,衝角付冑と挂甲がいっしょに用いられたことが多かったと考えるべきであろう。中世の冑は衝角付冑にくらべてはぎあわせの留鋲の頭がひじょうに大きくなったところから,星冑(ほしかぶと)といわれる。これには鉢を1枚の鉄板で打ち出し,筋を伏せ鋲を打った一枚張筋伏星冑(いちまいばりすじぶせのほしかぶと)と,5枚あるいは10枚以上の台形板金をはぎあわせて鋲留めしたものとの2種がある。とくに星のいちじるしく大きいものを厳星(いがぼし)といっている。そのほかには片白(かたしろ),二方白(にほうじろ),四方白(しほうじろ)などがある。それらは急こう配の円形鉢の頂辺に丸く孔をあけ,そのまわりに葵葉座(あおいばざ)と菊座,玉縁(たまべり)をつけて八幡座(はちまんざ)を設ける。さらに鉢の左右に響孔(ひびきあな)をあけて忍緒(しめお)を通し,眉庇を正面腰巻にほとんど垂直に打ちつけ,鉢の前後ないし左右に鍍金銀をほどこした地板を伏せ,鎬垂(しのだれ)を鋲留めする。𩊱(しころ)はふつう小札板(こざねいた)5段を杉成(すぎなり)に威(おど)し下げ,4段をゆるやかに吹き返して絵韋(えかわ)で包み,なかには鍬形を飾る鍬形台を眉庇に打ったものもある。中世の大鎧(おおよろい)には星冑をつけるのがふつうで,胴丸腹巻には着用しない。平安時代の冑の特色は,鉢の前後の径と左右の径がほとんど同じで,天辺の孔が大きく,星もいかめしく大で,間数と星数は少なく,𩊱は杉成形に葺卸(ふきおろし)のままとなっている。

 鎌倉時代に入ると,冑の鉢のこう配がゆるくなり,大きく丸みを加えていわゆる大円山(おおまるやま)形となり,天辺の孔は小さくなり間数は20~30枚張りと増し,星の行数もひじょうに多くなる。𩊱はすそが開いて杉成形からいわゆる饅頭𩊱とかわり,吹返しの返りは強くためている。南北朝以前の冑は遺品によればほとんど星冑に限られているが,南北朝時代の胴丸に具足している冑は,だいたいに筋冑(すじかぶと)である。筋冑ははぎあわせの鋲頭(びようがしら)を立てずにからくり,地板の外縁をひねり返して筋を立てたもので,鉢の形はしだいに阿古陀(あこだ)形を表し,𩊱も時代の進むにつれて笠形に開いた笠𩊱とかわり,吹返しは小さくなっている。室町末期に現れた当世具足に付属する冑の中で,従来の星冑と筋冑の系統に属するものは筋と星の行がひじょうに繁くなり,60間余のものが現れた。そのほか板金をはぎあわせた頭成冑(ずなりかぶと)や張懸鉢(はりかけばち)あるいは打出鉢に属する,一の谷,烏帽子(えぼし),頭巾(ずきん),鯰尾(なまずお),兎耳(とみみ),握拳(にぎりこぶし),突盔(とつぱい),桃形(ももがた),椎実形(しいのみがた),置手拭(おきてぬぐい),鯱(しやち),栄螺(さざえ),唐冠(とうかんむり)など各種がある。これは戦国武士の気風のもたらしたもので,乱軍の中にあっても自己の武勇をあらわそうとするところから,奇好で雑然とした形の冑が生まれた。
甲冑(かっちゅう)
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【甲冑】より

…戦士が胴部と頭部の防御具として着用する甲(よろい)と冑(かぶと)の総称。時代とともに,その素材は皮革などから金属に変わり,戦士の〈命を守る〉ことを目的として,堅牢度・機動性を高めるためにさまざまの改良が加えられたが,銃砲類が戦場に登場すると,急速にその実用性は失われた。
【日本】
 日本の場合,古墳時代の遺存例の大半は,鉄製甲冑であるが,まれに,鉄地金銅張り製,金銅製のものがある。また,弥生時代後期には木製短甲,古墳時代においても革製甲冑が確認されている。…

【鎧】より

…戦闘の際の防御具のひとつ。大鎧の俗称。また大鎧,胴丸腹巻当世具足(とうせいぐそく)などをふくめた総称でもある。広義の鎧(甲)の発達史については〈甲冑〉の項にゆずり,ここでは大鎧について述べる。 大鎧は着長(きせなが),式正鎧(しきしようのよろい)ともいう。もっぱら武将が着用した晴れの第一武装で,その威容は整った特色を示している。大鎧の起源は上古奈良時代に行われた挂甲(けいこう)をもとにするもので,平安時代前期に武士が興るとともに発達した騎馬での射戦に適応するよう,実用と意匠の両面において日本独特の発展をとげた。…

※「冑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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