出エジプト記(読み)シュツエジプトキ(その他表記)Book of Exodus

デジタル大辞泉 「出エジプト記」の意味・読み・例文・類語

しゅつエジプトき【出エジプト記】

Exodus旧約聖書中の一書モーセ五書の一。エジプトに居留したイスラエル人モーセに率いられて、圧政のエジプトから脱出し、シナイ山に至るまでを記す。モーセに与えられた十戒後半に述べられる。

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精選版 日本国語大辞典 「出エジプト記」の意味・読み・例文・類語

しゅつエジプトき【出エジプト記】

  1. ( 原題[ラテン語] Exodus ) 旧約聖書の第二書。五書の一つ。創世記につづき、エジプトに移住したイスラエルの民の苦難とその救済モーゼの生い立ち、エジプト脱出、シナイ山到達まで(前一三世紀)を記し、シナイ山でモーゼに与えられた十誡が後半に述べられている。

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改訂新版 世界大百科事典 「出エジプト記」の意味・わかりやすい解説

出エジプト記 (しゅつエジプトき)
Book of Exodus

旧約聖書の一書。名称は《七十人訳聖書》に由来する。モーセ五書,あるいは〈律法トーラー)〉の第2書をなす。第1書《創世記》がイスラエル民族の背景を成す家族史であるとすれば,この書は,直接,民族の誕生にかかわるできごとを記し,ユダヤ教,新約聖書キリスト教会で救済の範型として重んじられてきた。内容は3部に分かれる。第1部(1~15:21)はエジプトにおけるイスラエルの民の苦難とモーセの指導によるエジプト脱出,紅海(葦の海)渡渉を神の歴史への介入の奇跡として記す。第2部(15:22~18)は紅海の渡渉後,シナイ山に至る荒野彷徨中の食物・水不足に対するつぶやきと神の導きの物語(この部分は《民数記》10:11以下に続く)。第3部(19~40章)はシナイ山における神の諸種の誡命・律法の付与とそれに基づく神と民との契約の締結の記事(この部分は《レビ記》全体,さらに《民数記》10:10まで続く)である。第3部のシナイ契約伝承の中で古い伝承層に属するとされるのは,19~24,32~34章であり,十誡(20:2~17),《契約の書》(20:22~23章),契約締結(24章),第2の石の板(32:14~28)が含まれる。第1部では,モーセの誕生(2章),召命と神との出会い(3章),過越の祭の規定(12~13章),海の奇跡(12,14章),海の歌(15:1以下)などが有名である。全体として,苦難“から”の解放の自由と,神の戒め“へ”の服従の自由の結合という聖書宗教思想の特質としての〈自由〉を教えている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出エジプト記」の意味・わかりやすい解説

出エジプト記
しゅつエジプトき
Shemoth; Exodus

旧約聖書中の一書。マソラ本文では律法書の,またセプトゥアギンタではモーセ五書の第2書。ヘブライ名はシェモース Shemoth(名前の意味)であり,『出エジプト記』の名はギリシア語のエクソドス Exodus(出発の意味)からきている。本書はほかの律法の書および『ヨシュア記』とともにイスラエル民族の起源とその選びという統一的主題のもとにイスラエルの民の救済史を形成する。『出エジプト記』もほかの 5書同様,いくつかの時代の資料からなるが,祭司資料,ヤハウェ資料,エロヒム資料がおもなものである。本書の主題は神によって選ばれたイスラエルの民の救出と信仰共同体としての民族の確立であり,内容は (1) エジプトからの脱出と荒野の放浪(1~18章),(2) シナイ山での契約とそれに基づく祭儀(19~40章)に大別される。(1) には,エジプトにおけるイスラエルの民への圧制,モーセの誕生と召命,脱出と海が裂けた奇跡,放浪における苦難,モーセの義父エテロの来訪が,(2) には後世キリスト教神学で,存在そのものとしての神を弁護する聖書的典拠となった神の顕現,十戒,主の幕屋造営のための指示,祭儀上の指示,背教と契約の更新などが記されている。キリスト教ではこの出エジプトを神による人類の救済の予型とみている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「出エジプト記」の意味・わかりやすい解説

出エジプト記
しゅつえじぷとき
The book of exodus

『旧約聖書』2番目の書で、次の三つからなるイスラエル民族成立史を内容とする。

(1)エジプトからの脱出を指導したモーセの誕生、奇跡的守護、召命。エジプト王との交渉、エジプトへの多くの災禍、過越祭(すぎこしのまつり)の由来、そして紅海の奇跡による脱出成功。

(2)モーセ集団への神の導き、神の山でモーセ妻子と岳父の祭司エテロと再会。

(3)シナイ山における神の顕現、契約と十戒によるヤーウェ信仰を基盤にしたイスラエル宗教共同体の確立。

 本書は紀元前10世紀末のヤーウェ資料、それから前760年ごろのエロヒム資料と前6世紀の祭司資料の複雑な融合からなっている。ことに紅海の奇跡によるエジプト脱出とシナイ契約は本書の二大テーマであり、それは歴史における神の救済信仰を生み出し、ユダヤ教およびキリスト教の信仰の根幹となる。またモーセの十戒(22章)は、現在も多くの人々の日常生活の倫理的規範になっている。

[吉田 泰]

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百科事典マイペディア 「出エジプト記」の意味・わかりやすい解説

出エジプト記【しゅつエジプトき】

旧約聖書の一書で,英語では《Book of Exodus》。《創世記》に続き,エジプトにおけるイスラエル民族の苦難,モーセのおいたちと召命,エジプトを脱出しシナイ山に到達するまで,律法の授与などについて記す。

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旺文社世界史事典 三訂版 「出エジプト記」の解説

出エジプト記
しゅつエジプトき
Exodus

『旧約聖書』中のモーセ五書の中の第2書
前半は,モーセのおいたちと,彼がヘブライ人を率いてエジプトを脱出し,シナイ山に至るまでを記し,後半は,シナイ山頂で神から与えられた律法(十戒)をつくることなどが記されている。

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世界大百科事典(旧版)内の出エジプト記の言及

【契約の書】より

…旧約聖書《出エジプト記》20章後半部から23章中ごろまでに認められるイスラエル最古の法律集。21~22章の本体部分は,奴隷の取扱い,傷害や窃盗などの不法行為に関する法から成り,条件法を主体とするが,断言法や,〈目には目を,歯には歯を〉で知られるタリオ(同害報復)法をも含んでいる。…

【十誡】より

…〈十戒〉とも書く。聖書,キリスト教世界の倫理の根幹を成す基本的誡命であり旧約聖書《出エジプト記》20章2~17節(ほぼ同じ並行記事は《申命記》5:6~21)にあり,特に〈モーセの十誡〉と呼ばれる。同書には,ほかにも10ないし12の誡めの組が見いだされているからである。…

※「出エジプト記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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