憲法93条が定める地方自治体の「議事機関」。住民が直接選挙で選んだ議員で構成し、条例や予算を決める。首長の行政運営に対する監視機能も持ち、対立した場合は不信任を議決できる。都道府県、市町村、東京23区とも同じ仕組みで、議員の任期は4年。議員定数は条例で決められる。報酬のほか、自治体によっては政務活動費も支給される。
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地方公共団体の住民が直接選挙する議員によって構成される(合議制機関)、同団体の意思決定を行う機関(議事機関)。都道府県、市町村および特別区に置かれる議会の総称。
日本国憲法は「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する」と定め(日本国憲法93条1項)、地方議会を必置機関としている(地方自治法89条1項)。ただし、町村については議会を置かずに、選挙権を有する者の総会を条例で設置することができる(地方自治法94条)。
地方議会は、国会と内閣の関係と異なり、執行機関に対して優越的な地位が保障されてはおらず、並列・対等の関係である。
地方議会は議員によって構成される(議員定数は条例で定める)。議員が選挙する議長が地方議会の代表であり、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統括する(同法103条1項、104条)。議会の会議には最終的に意思決定を行う議員全員による本会議と、本会議の議決前に、地方公共団体の事務を予備的、専門的に調査・審議する委員会がある。本会議は定例会と臨時会である(同法102条1項)。2004年(平成16)の地方自治法改正前は、定例会の回数は毎年4回以内とされていたが、改正後に定例会は毎年、条例で定める回数を招集しなければならないとされた(同法102条2項)。定例会の会期を通年としている地方公共団体は1県14市31町村、定例会を年1回と定める地方公共団体は2県32市区31町村ある(2021年4月1日時点)。委員会には常任委員会、議会運営委員会および特別委員会があるが、これらは設置が義務づけられていない(同法109条1項)。
議会の招集は、原則として地方公共団体の長が行う(同法101条1項)。議会の会議の運営について地方自治法は、会議は公開で行われるべきこと(同法115条1項)、会議は議員の定数の半数以上が出席しなければ開くことができないこと(同法113条)、議会の議事は出席議員の過半数で議決しなければならず、可否同数の場合は議長が決定すること(同法116条1項)、そして、議会は会期ごとに独立したものであり、議決に至らなかった事件は会期終了で消滅し、これ以降の後会に継続しない(同法119条)という会議原則を定めている。
地方議会は、地方公共団体の意思を決定する議決権が授権されている(同法96条)。議決権の範囲は、条例の制定・改廃や予算の決定、契約の締結、法律・政令で議会の権限とされている事項など広範囲に及ぶ。執行機関に対する監視権限として、地方公共団体の事務の書類・計算書の検閲や執行機関の事務の管理、議決の執行および出納の検査権(同法98条1項)、監査委員に対する事務の監査請求権(同条2項)、証人喚問や証言請求を行えるいわゆる100条調査権が認められている。このほか、議会の会議規則の制定(同法120条)、議員の資格決定(同法127条1項)や懲罰(同法135条)についての権限も有する。懲罰について、これまで除名のみが司法審査の対象とされてきたが、2020年(令和2)11月、最高裁判所は出席停止処分の取消しを求める訴えは法律上の争訟に該当するとして(最高裁判所大法廷令和2年11月25日判決民集74巻8号2229頁)、1960年(昭和35)最高裁大法廷判決の判例変更が行われた。
議会の解散については、地方公共団体の長に対する議会の不信任決議がなされたときに長が議会を解散する場合(地方自治法178条1項)、「地方公共団体の議会の解散に関する特例法」(昭和40年法律第118号)に基づき議会が自主解散する場合、住民による議会の解散請求による場合(地方自治法76条1項)がある。
地方議会については、その改革や活性化のために議会基本条例を制定する市町村や県が出てきている。他方で、都道府県議会や町村議会で無投票当選の割合が増加していること(2019年統一地方選挙で都道府県県議会議員選挙で26.9%、町村議会議員選挙で23.3%を占める)、地方議会における女性議員の割合が男性の議員に比べて著しく低いこと、などの問題が指摘されている。
明治憲法下においても、府県会、市会や町村会に議決機関が置かれていた(このほか、北海道会、府県組合会、市町村組合会、町村組合会にも設置されていた)。市町村会、府県会の選挙権は、1926年(大正15)に納税要件が撤廃されて普通選挙が実施されたものの、選挙の資格は男性に限定されており、住民の代表機関とはいえないものであった。市町村会においては、条例制定や起債等について内務大臣の許可が原則必要とされていたし、内務大臣には市町村会の解散権限も認められていた。府県会および市町村会の双方に議決権が付与されていたものの(府県会の議決権は法令に定める事項に限定されていた)、議決にあたって監督官庁の許可を要し、また、監督官庁が府県会や市町村会の議決を取り消すことも認められていた。明治憲法下の地方議会は中央集権的官僚統制下に置かれ、国の後見的監督の下に置かれており、住民自治と団体自治の原則に基づく地方自治のための地方議会と位置づけることはできないものであった。
[山田健吾 2024年2月16日]
海外の地方議会は、日本のそれと異なり、組織や権限、執行機関との関係も一様ではない。
イギリスにおいては、イングランドとウェールズ、スコットランド、北アイルランドでは地方議会制度も若干異なっている。首都ロンドンを例にとると、広域団体であるグレーター・ロンドン・オーソリティー(Greater London Authority:GLA)の下に、ロンドン区とシティ・オブ・ロンドン・コーポレーション(City of London Corporation。略称シティ・オブ・ロンドン)がある。GLAにロンドン議会が置かれており、その権限は、ロンドンの政策課題(交通、警察、住宅など)の調査・検討や予算編成などである。ロンドンや大都市圏以外の地域の地方公共団体は、「カウンティCounty」と「ディストリクトDistrict」の二層制となっており、それぞれに議会が置かれている。これらの地方議会には、執行機関の政策決定や執行について評価や監視をする権限などが与えられている。
アメリカにおいては、地方議会は、郡、市、町、村ごとに置かれる。アメリカにおける市制についていえば、市長・市会型(市長も住民により直接選挙され、市会は立法機関、市長は執行機関として行政権を担う)、市会・支配人型(市会が立法権と行政権を担うが、1人の市支配人を選任して行政的職務を一任し、市会がその監督にあたる)などがあり、その組織についても権限についても一様ではない。
ドイツの地方議会制度も各州によって異なるが、各州の郡や市町村に議会が設置されている。市町村の議会では、議会の長と執行機関の長がそれぞれ直接選挙で選ばれる場合や、議会の長が執行機関の長を兼ねる場合などがある。市町村の議会は、条例制定権限や市町村行政に関する権限を有する。郡の議会は、条例制定権限とともに、市町村の区域を超える広域事務や市町村の補完事務などに関する権限を付与されている。
フランスの地方公共団体としては、州、県、コミューン(市町村)がある。これらの地方公共団体には審議・議決機関として議会が置かれており、それぞれの議会の長が同時に執行機関の長でもある。これらの地方議会は、地方公共団体の予算の審議、財産の維持・管理や社会保障に関する事項などについての権限を有している。パリ、マルセイユ、リヨンの大都市には区が設置され、各区に区議会が設けられている。
[山田健吾 2024年2月16日]
地方公共団体に設置されている議決機関をいう。普通地方公共団体である都道府県,市町村の議会(都道府県議会,市町村議会)は直接公選制である。特別地方公共団体の場合は多様であるが,特別区議会は直接公選制が法定されている。なお,町村は地方自治法94条の規定により,議会をおかずタウン・ミーティングともいうべき町村総会に代えることができる。第2次世界大戦後初期に神奈川県足柄下郡箱根町がこれを採用したが,現在では存在しない。
日本の地方議会は1878年の府県会規則,80年の区町村会規則に基づき府県と区町村に設けられた。その後88年,90年の市制,町村制および府県制,郡制によって各級地方団体に設置され,権能に関する法体制が整えられた。しかし,明治憲法下における地方議会は1926年まで厳しい制限選挙のもとにおかれ,同時に権限も歳出入予算の議決などにあったが,事実上国政事務に対する地方の費用支弁の同意を議定するにすぎず,中央から地方に至る官僚支配と地方の名望家支配とを結び付ける政治的装置であった。現行日本国憲法の下では,地方自治体の政治制度に首長主義が採用されている。
地方議会は二元的代表機関の一方に位置づけられ,公選首長との相互抑制を原理として地方自治体の運営に責任をもつ。この責任の遂行のために地方自治法第6章は,議会の構成,運営,首長との権限関係を詳細に規定している。地方議員の定数は人口段階別に定められ都道府県は40~130人,市町村は12~100人であり,条例によって減員可能である。議会は首長が招集する定例会と臨時会からなる。定例会は年4回以内において条例で定める回数,臨時会は必要となる事件に限って開催される。議会運営には国会と同様に常任委員会制が採用されている。都は12,道と人口250万以上の府県,同100万以上の市は8,人口100万以上250万未満の府県と同30万以上100万未満の市は6,人口100万未満の府県と30万未満の市と町村は4をそれぞれ定限として条例で常任委員会が設けられ,当該部門事務の調査や議案陳情,請願を審議する。常任委員会編成は通常,行政機構の部局編成に対応している。このほかに議会は必要に応じて特別委員会を条例で設置できる。議会の最大関心事の一つである予算審議は,特別委員会を設けて行われるのが一般的である。委員会は議会閉会中も付議された事件を審査できる。会議は秘密会の議決がないかぎり公開である。地方議会は条例の制定改廃,予算の議決,決算の認定,税や使用料手数料の徴収,契約の締結,財産の取得と処分,寄付または贈与の受理など14項目(地方自治法96条)にわたって議決権をもち,この議決がなければ理事者の行政行為は原則として成立しない。加えて,議会は書類,計算書の検閲および検査権,監査委員への監督請求権をもつばかりか,地方自治法100条に基づき証人,参考人の喚問,書類等の強制提出による事務事業の調査権をもつ(〈100条調査〉)。行政機構の人事面に関する議会の統制権も強大であり,長の不信任議決ができるほか,副知事,出納長,助役,収入役,監査委員その他行政委員会委員の選任に同意権限をもっている。
ところで,このような議決機関たる地方議会の強大な権限に対抗して首長は再議権,専決処分,解散権をもつ。また法令により地方議会は予算修正権を増額修正に限定されるとともに機関委任事務の審議権をもたない。ここから首長権限に対し弱体な議会なるイメージが生まれ間接民主制の危機すら論じられるが,それは必ずしも事実を説明していない。機関対立主義が議会側に正しく理解されず,あたかも執行機関であるかのように首長の人事権や請負契約等への介入,補助金陳情を繰り返し,議長,委員長のポストをめぐる抗争を行い,議会調査スタッフの整備も遅れている。1960年代以降の多党化現象の中で議会改革は徐々に進んでいるが,今なお大きな課題である。
一般に外国でも地方自治体に議会councilが設置されているが,その権限,機能,選出方法は多岐にわたっており,同一国家内においてすら一律ではないことが少なくない。日本のような全国画一的制度はむしろ例外に属する。アメリカの市政府形態は,市長-市議会型に加え市支配人-市議会型,委員会制が広くみられるが,後者2形態では議会は執行機関と対立関係をとらない。とくに委員会制では議決機関と執行機関は同一である。市長-市議会型でも議決機関たる議会の権能は都市によって異なる。イギリス,スカンジナビア諸国の地方議会は,議決機関と執行機関との権能を併せもち,議会事務総長clerkが首席行政官である。議員選挙もイギリスでは3分の1が毎年改選される。フランス,イタリア,ベルギーの地方議会は議決機関であるが市町村長を選出しており,議員選挙に比例代表制が採用されている。スイスでは直接民主制の伝統の下に,投票権をもつすべての市民からなる市民会議が議決機関となっている。
→地方議員
執筆者:新藤 宗幸
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(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…議会内において議員は正副議長に選任された者を除いて,必ず一つの常任委員会委員に就任しなければならない。議員は地方議会の議決するべき事項のうち予算を除く事件について定員の8分の1以上の賛成があれば議案を提出できる。また,議決機関の一員として議会に付与されている調査権,検閲権,首長の不信任,特別職公務員の選任の同意などの権限を行使できるが,自己もしくは配偶者,父母,祖父母,子,孫,兄弟姉妹の一身上に関する事件,およびこれらの者が従事する業務に関係する事件の審議には参加できない。…
※「地方議会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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