出語り(読み)デガタリ

デジタル大辞泉 「出語り」の意味・読み・例文・類語

で‐がたり【出語り】

人形浄瑠璃歌舞伎で、浄瑠璃太夫三味線弾きとが舞台上に設けられた席に出て、観客に姿を見せて語ること。

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改訂新版 世界大百科事典 「出語り」の意味・わかりやすい解説

出語り (でがたり)

浄瑠璃用語。浄瑠璃の太夫と三味線が見物に姿を見せて演奏すること。初期の人形浄瑠璃では太夫と三味線は幕の陰で語っていたが,1705年(宝永2)大坂竹本座の《用明天王職人鑑》から出語り出遣いが始まったといわれる。現在の文楽では,ごく短い端場を除いて出語りが主となっており,演奏者は舞台上手(右)にしつらえた床(ゆか)に座し,肩衣を着用する。出語りでない場合は床の上部の御簾(みす)の陰で語るので〈御簾内(みすうち)〉と呼ぶ。
執筆者: 歌舞伎の義太夫狂言では,伴奏の竹本は舞台上手の上にある御簾の内(チョボ床)で語るのがきまりだが,下におりて文楽と同じように出語りになることがある。常磐津清元の浄瑠璃は出語りが原則で,背景にあわせて正面に山や土手を描いた比較的高い台〈山台〉の上に座る。位置は演目により上手または下手。長唄が舞台に出るときは緋毛氈(ひもうせん)を敷いた雛段を置き,上段に唄と三味線,下段囃子方がすわる。これを出囃子という。雛段は宝暦(1751-64)ころからはじまった。能・狂言に取材した松羽目物はたいてい正面出囃子。とくに《勧進帳》では柿色の肩衣,《娘道成寺》では桜色の肩衣をつける。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出語り」の意味・わかりやすい解説

出語り
でがたり

浄瑠璃用語。人形浄瑠璃または歌舞伎で,太夫,三味線が (ゆか) で観客に姿を見せて語る形式。古浄瑠璃時代は語り手幕の内 (人形遣いの後方) で語ったが,元禄 (1688~1704) 頃から,道行,景事などの段に,人形の出遣い,太夫,三味線の出語りが流行。当時は人形と同一舞台上で行なった。近代以後の人形浄瑠璃では,各段の切場はもとより,御簾内 (みすうち。舞台に向って右上方) で語るべき端場まで,出語りすることが多くなった。歌舞伎では,常磐津や清元が演奏するところを山台と呼び,義太夫狂言の竹本 (→ちょぼ ) に限って床という。

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百科事典マイペディア 「出語り」の意味・わかりやすい解説

出語り【でがたり】

歌舞伎演出用語。伴奏音楽の浄瑠璃の演奏者が舞台に姿を見せて演奏すること。反対に御簾(みす)の中で隠れて演奏するのを御簾内という。常磐津節・清元節は出語り,河東節・一中節などは御簾内が原則で,義太夫節は両方の場合がある。

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世界大百科事典(旧版)内の出語りの言及

【歌舞伎】より

… 第2は観客から見える場所で演奏する音楽で,これは下座音楽のように劇の進行を助けるための伴奏ないし効果の域にとどまらず,俳優の芸と対等のものとして,演奏者個人の〈芸〉を聴かせる性格が強い。〈竹本〉(チョボ)と呼ばれる義太夫節の場合は,本来は上手(かみて)の2階にある御簾の内で顔を見せずに演奏したものであったが,後に上手の床(ゆか)で〈出語り〉をすることも行われるようになった。長唄と囃子は舞台正面の〈雛段(ひなだん)〉に,常磐津は下手,清元は上手にもうける〈山台(やまだい)〉で演奏するのを原則とする。…

※「出語り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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