デジタル大辞泉 「出資法」の意味・読み・例文・類語
しゅっし‐ほう〔‐ハフ〕【出資法】
[補説]平成18年(2006)の貸金業法改正以前、多くの貸金業者が、出資法の旧上限金利(年29.2パーセント)と利息制限法の上限金利(年15~20パーセント)の間(グレーゾーン金利)で貸し付けを行い問題視されていた。平成22年(2010)6月に貸金業法等の改正が完全施行され、出資法の上限金利は20パーセントに引き下げられ、グレーゾーン金利は撤廃された。
ノンバンク等の金利を取り締まるための法律。正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」。1954年(昭和29)制定。昭和29年法律第195号。匿名組合形態をとると自称する団体が、元本・高利を保証して一般大衆から零細な資金を集めたが、放漫経営、政府による金融の引締めの結果倒産し、利息はおろか元本の返還すら不可能となってしまった、いわゆる保全経済会事件(1953)が契機となって制定された。同事件では、一般大衆をだます意思があるかどうかについての立証がきわめてむずかしかったため、刑法上の詐欺罪に問うことが非常に困難であった。そのため、刑法および当時の金融取締規制の盲点を埋めるべく、ノンバンク等(いわゆる街の金融機関や利殖機関など)に法令の規制を受けさせ、取り締まるために本法が制定された。
同法は、出資金以上の額の返済を約して行う不特定多数者からの出資金の受入れの制限、銀行など他の法律に特別の規定のある者以外の業として行う預り金の禁止、金融機関の従業員による業務外の貸借契約(いわゆる浮貸し)等の禁止、金銭貸借の媒介手数料の制限、高金利の処罰などについて規定する。出資者の不測の損害を防止し、高利貸による暴利をむさぼる行為をも禁止するとともに、金融機関の財務基盤の健全性もあわせて保護している。
同法は幾度もの改正を経ている。1983年には、貸金業者の貸付にかかる刑罰金利を年109.5%から年40.004%へと引き下げることを主たる内容とする改正がなされた(しかし、同改正法には二段階の経過措置が設けられ、40.004%への金利引下げは1991年10月になってようやく実現された)。これにより、グレーゾーン金利(出資法上の刑罰金利と利息制限法上の規制金利との間の差)が縮小された。同改正法は、同時に制定された「貸金業の規制等に関する法律」(2006年改正に伴い「貸金業法」に改称)とともに、サラ金規制法と称されて注目された。その後も段階的に金利が引き下げられ、2000年(平成12)には、いわゆる商工ローン問題を契機とした貸金取立て行為の規制とともに、刑罰金利を年40.004%から29.2%へと引き下げることを主たる内容とする改正がなされた。2003年には、貸金業法上の登録を受けずに貸金業を営む者および登録業者であっても超高金利による貸金業務を行っている者である、いわゆる闇(やみ)金融業者への対策のための改正がなされた。ここでは、利息の支払いの要求をも刑事罰の対象として取立て行為への出資法の適用を容易にし、および、出資法違反の高金利に対する刑罰を、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその併科から、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその併科へと引き上げた。2006年には、グレーゾーン金利撤廃のために刑罰金利を年29.2%から年20%へと引き下げる一方、年109.5%を超える金利で行う営業貸付には10年以下の懲役または3000万円以下の罰金に処するとして、著しい高金利については罰則を強化するなどした(2010年施行)。
[武田典浩]
『大村敦志著『法律学大系 消費者法』第4版(2011・有斐閣)』▽『齋藤正和編著『新出資法――条文解釈と判例解説』(2012・青林書院)』▽『山口厚編著『経済刑法』(2012・商事法務)』▽『日本弁護士連合会編『消費者法講義』第4版(2013・日本評論社)』
…第2次大戦後には闇金融が猛威をふるい社会秩序のうえから1949年に〈貸金業等の取締に関する法律(貸金業法)〉が定められた。しかし,なお預金類似行為を営んで,一般の人々を惑わすことが多かったため,貸金業法に代わって54年〈出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)〉が施行され,出資の受入れ規制,預り金・浮貸しなどの禁止,高金利(日歩30銭を超えるもの)に対して処罰を行うことによって,高金利の防止を図ることになった。不良業者はその法の網の目をくぐって不正を働いたため,不良貸金業者を排除する目的で71年〈貸金業者の自主規制の助長に関する法律〉が施行された。…
…なお,この事件を契機として,商品預託取引業法(特定商品等の預託等取引契約に関する法律,1986公布)が制定され,いわゆる〈預金まがい=現物まがい(ペーパー)商法〉が規制の対象となった。(3)サラ金業者による暴利,高金利事犯(出資取締法5条違反)は,かつて,出資法違反事件の大半以上を占めていたが,1976年をピークに,現在では漸次減少傾向にある。(4)銀行法等の金融業に関する法規では,無免許営業を禁ずるほか,役員等が大蔵大臣に提出する業務報告書等に不実記載,また虚偽報告,検査拒否等の行為に刑事罰をもってのぞんでいる。…
…一部にはたしかに近代に至っても高利が行われ,また利息天引きあるいは実質的には利息なのに手数料,礼金等の名目で金を別にとるなどの悪習があったので,利息制限法(1877公布,1954新法公布)や貸金業法(1949公布)が定められた。1954年には貸金業法に代わって出資法が定められた。そして近年のサラ金禍のなかで,83年出資法が改正されるとともに,貸金業規制法(いわゆるサラ金規制法)が制定,施行された(〈貸金業〉〈サラリーマン金融〉の項参照)わけで,取締り対象となるべき悪質業者が横行したのは事実であるが,歴史的には時代的制約の中で生業補完のために有効な働きをしたといえる。…
…サラリーマン金融の特色としては,(1)簡単に手軽にその場ですぐ借りられる利便性,(2)高金利,(3)厳しい取立て,があげられる。ただ,83年に〈貸金業の規制等に関する法律〉と〈出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)〉の一部改正法からなるいわゆる〈サラ金規制法〉が成立して(2)(3)についてはかなり変わった。すなわち金利については,上限がそれまで事実上年利109.5%(日歩30銭)だったのが,最終的に40.004%(同10.96銭)に引き下げられ,取立てに関しては威圧的な取立てや深夜の取立てが規制された。…
…利息制限法は,高利についてその私法上の効果を抑制するものであり,これのみによって高利抑制の目的を達するのは困難なので,別に本法が制定された。〈出資法〉あるいは〈出資取締法〉と略称する。本法は,貸金業者の取締りを主眼とし,あわせて一定の刑罰を加えることによって高利を禁圧しようとする。…
※「出資法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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