初瀬川(読み)ハツセガワ

デジタル大辞泉 「初瀬川」の意味・読み・例文・類語

はつせ‐がわ〔‐がは〕【初瀬川】

奈良県桜井市を流れる初瀬はせ川の古称。[歌枕
「―古川の辺に二本ふたもとある杉年を経てまたも逢ひ見む二本ある杉」〈古今雑体

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精選版 日本国語大辞典 「初瀬川」の意味・読み・例文・類語

はつせ‐がわ‥がは【初瀬川・泊瀬川】

  1. [ 1 ] 奈良盆地を流れる初瀬(はせがわ)の古称。歌枕。
    1. [初出の実例]「岩ばしりたぎち流るる泊瀬河(はつせがは)絶ゆることなくまたも来て見む」(出典:万葉集(8C後)六・九九一)
  2. [ 2 ] 初瀬川の流れが速いところから、「はやく」にかかる。
    1. [初出の実例]「はつせ川はやくのことは知らねども今日の逢ふ瀬に身さへなかれぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)

はせ‐がわ‥がは【初瀬川】

  1. 奈良県北東部、大和高原の南西部に発し、桜井市初瀬から扇状地をつくって北西流する川。佐保川飛鳥川と合流して大和川となる。はつせがわ。泊瀬川。

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日本歴史地名大系 「初瀬川」の解説

初瀬川
はせがわ

桜井市東北山中の大字小夫おうぶ白木しらき付近に発して、長谷寺のある初瀬から渓谷を西流、三輪山南麓を西北流して巻向まきむく川を合わせ、磯城しき郡に出、布留ふる川を合して大和郡山市南端部で佐保川と合する。ここから下流を大和川という。

古くは泊瀬はつせ川と記し、「日本書紀」継体天皇七年九月条に次の歌が載る。

<資料は省略されています>

同書敏達天皇一〇年閏二月条には蝦夷の綾糟らが「泊瀬の中流に下て、三諸岳みもろのおかに面ひて、水を歃りて」天皇に忠誠を誓ったことを述べる。これより先の応神天皇九年条には武内宿禰が弟の甘美内宿禰に讒され、天皇は二人に命じて「共に磯城川しきのかわに出でて探湯くかだち」させ、武内宿禰が勝った話がある。磯城川は初瀬川の一部をさすとみられ、神聖な三輪山(三諸岳)付近の川辺は允恭紀に出る甘橿あまかし(高市郡明日香村)の探湯と同じように、こうした場所として伝えられていたのであろう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「初瀬川」の意味・わかりやすい解説

初瀬川(はせがわ)
はせがわ

奈良県北西部を流れる川。大和(やまと)川の上流部。「はつせがわ」ともいう。笠置(かさぎ)山地(大和高原)南西部の桜井市上之郷(かみのごう)に発し、長谷(はせ)寺のある初瀬(はせ)からは渓谷をなして西流し、三輪(みわ)山南麓(ろく)の桜井市街地付近で奈良盆地に出る。盆地を北西流し、巻向(まきむく)川、布留(ふる)川などを集め、大和郡山(こおりやま)市南端部で南流する佐保(さほ)川と合流して大和川となる。泊瀬川(はつせがわ)として『古事記』『万葉集』などに詠まれている。

[菊地一郎]


初瀬川(はつせがわ)
はつせがわ

初瀬川

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「初瀬川」の意味・わかりやすい解説

初瀬川
はせがわ

奈良県北部の川。大和川の上流。長さ 28km。大和高原南西部の貝ヶ平山付近に源を発してほぼ南流,のち西流して桜井市の市街地付近で奈良盆地に入り,飛鳥川,佐保川,竜田川などを集めて大和川となる。上流部はV字谷をなすが中流部は天井川となり,沿岸の灌漑に利用されている。

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世界大百科事典(旧版)内の初瀬川の言及

【大和川】より

…奈良県北部,大和高原の貝ヶ平山(822m)付近に源を発し,奈良盆地,大阪平野を経て大阪湾に注ぐ川。奈良盆地上流部では初瀬(はせ)川と呼ばれ,佐保川飛鳥川竜田川など奈良盆地の諸河川を合わせたのち生駒・金剛山地を横断して大阪平野に出る。幹川流路延長68km,全流域面積1070km2。…

※「初瀬川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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