劇症型溶血性連鎖球菌感染症(読み)ゲキショウガタヨウケツセイレンサキュウキンカンセンショウ

デジタル大辞泉 の解説

げきしょうがたようけつせいれんさきゅうきん‐かんせんしょう〔ゲキシヤウがたヨウケツセイレンサキウキンカンセンシヤウ〕【劇症型溶血性連鎖球菌感染症】

《「劇症型溶血性レンサ球菌」と書くことが多い》突発的に発症し急速に進行する、溶血性連鎖球菌による感染症。原因となるのは、主にA群溶血性連鎖球菌で、皮膚のど常在し、咽頭炎扁桃炎へんとうえんなどを起こすが、血液筋肉、肺などに侵入すると重症化することがある。発症すると、手足の皮膚や筋肉の壊死えしが急速に進み、多臓器不全からショック状態に陥り、数十時間で死に至ることもある。STSS(streptococcal toxic shock syndrome)。
[補説]非常に進行が早い致死性疾患を引き起こすため、メディアなどでは俗に人食いバクテリアとも称される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

劇症型溶血性連鎖球菌感染症
げきしょうがたようけつせいれんさきゅうきんかんせんしょう
streptococcal toxic shock syndrome

おもにA群溶血性連鎖球菌(A群溶連菌)の感染が原因となって突然おこる疾患。劇症型溶連菌感染症、または英語の頭文字をとってSTSSと略称される。数時間のうちに人体の軟部組織に壊死(えし)性筋膜炎や蜂巣織(ほうそうしき)炎をおこし、多臓器不全が生じてショック症状となり、致死率は30~70%ときわめて高い。欧米では、1980年代の後半から報告があり「人食いバクテリア」と報道されて騒がれた。日本では、1992年(平成4)に千葉県の旭(あさひ)中央病院で初めて報告された。2006(平成18)~2010年までは年間100例前後、2011~2014年は年間200例前後で推移し、その後2019年(令和1)まで年々増加した。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)流行後の2020~2022年は減少したが、2023年にはふたたび増加した。患者の多くは30歳以上で男女差はない。

 おもな感染経路は飛沫(ひまつ)感染と接触感染で、重症化するメカニズムは未解明である。病気の症状や経過も大幅に異なるので、公表された旭中央病院の症例のなかから代表的なものを要約して以下に紹介する。

①病気の進行がもっとも早かった一例は45歳の男性で、下肢の痛みはあったが自分で車を運転して病院へ行き、待合室で待っているうちに下肢の腫(は)れが増して気分が悪くなり、ただちに入院したが急性心停止で死亡した。

②37歳の男性は急性腎(じん)不全で受診して透析を受け、その夜に右大腿(だいたい)部が著しく腫れたので切開したが、翌朝、手術部位に壊死が認められ、再手術。同日午後、皮膚の壊死はさらに拡大し周囲に水疱(すいほう)ができて破れ、壊死病巣は下肢から腹部に広がり、7日目に死亡した。

③分娩(ぶんべん)に合併した例では、分娩の直前までは正常。分娩中に胎児の心音が停止。分娩後1時間で産婦にショック症状がおこり、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群がおこった。

 治療には、抗菌薬のペニシリン系の薬が第一選択で、大量投与が必要とされ、クリンダマイシンなども併用される。

[柳下徳雄]

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