先例,故実,吉凶あるいは事を行う場合の日時の選定などについて,事実および意見を上申する文書。〈かもん〉ともいう。〈勘〉はかんがえるの意。勘状,勘注あるいは注進状ともいい,先例を上申したものは勘例ともいう。勘文の内容はきわめて多種類にわたるが,おおむね朝廷の諸事は太政官の外記と史が,日時・方角については陰陽道,日・月食の時刻は暦・算・宿曜道の諸家が,改元の年号は儒家が,犯罪人の量刑については法家が勘申した。勘文の古い例として《朝野群載》所収の737年(天平9)天然痘流行のときの典薬寮の勘文は,はじめに〈典薬寮勘申疱瘡治方事〉とあり,次に予防と治療の方法を記述し,〈右依宣旨勘申〉とあって,最後に日付と勘文作製者の署がある。以後の勘文の様式もほぼこれと同じである。
執筆者:柳 雄太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「かもん」ともいう。天皇・院などの上意を受け、その裁断の資料として先例・故実を考査して提出する答申書。令(りょう)制の諸寮司が提出する諸司勘文と、明経(みょうぎょう)、明法(みょうぼう)、文章(もんじょう)、天文・陰陽(おんみょう)、暦道(れきどう)などが提出する諸道勘文の2種があった。前者の例として、主計寮勘文、主税寮勘文、率分(りつぶん)勘文などがあり、後者の例として、年号、革命、著(ちゃくだ)、服假(ぶっか)、穢(けがれ)、日時、吉凶、日月食、地震などに関する勘文がある。室町時代には武家故実に取り入れられ、将軍の諮問による勘文が徴された。
[棚橋光男]
『布施弥平治著『明法道の研究』(1966・新生社)』
「かもん」とも。平安時代以降,朝廷や幕府などの諮問に答えて諸司・諸道から上申された文書。政治・儀式などを行う過程で生じた疑義について先例・故実・吉凶などの調査や判断を,関連する諸司や諸道に通じた者に命じて提出させたもの。のちに勘状と称することが多くなる。先例を上申したものは勘例ともいう。勘文を提出する諸司・諸道は多岐にわたっているが,官司には神祇官・外記局・文殿(ふどの)・陰陽(おんみょう)寮などが,諸道には明法(みょうぼう)・紀伝・文章(もんじょう)・陰陽・暦・天文などがある。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…勘状,勘注あるいは注進状ともいい,先例を上申したものは勘例ともいう。勘文の内容はきわめて多種類にわたるが,おおむね朝廷の諸事は太政官の外記と史が,日時・方角については陰陽道,日・月食の時刻は暦・算・宿曜道の諸家が,改元の年号は儒家が,犯罪人の量刑については法家が勘申した。勘文の古い例として《朝野群載》所収の737年(天平9)天然痘流行のときの典薬寮の勘文は,はじめに〈典薬寮勘申疱瘡治方事〉とあり,次に予防と治療の方法を記述し,〈右依宣旨勘申〉とあって,最後に日付と勘文作製者の署がある。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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