中国,陝西省西安市の東約6kmにある新石器時代仰韶(ぎようしよう)文化半坡類型の標準遺跡。1953年に発見され,54年から57年まで5回にわたり中国科学院考古研究所が調査し,また71年には半坡博物館が調査した。遺跡は滻河の東岸800m,河床から高さ9mの台地にあり,文化層の厚さは約3mで4層からなる。住居址,貯蔵穴,墓葬,家畜を飼った柵囲いのほかに,9000点近くの遺物が発見された。集落は幅および深さそれぞれ5~6mの環濠で囲まれ,その北に共同墓地,東側に土器を焼いた窯址がある。居住区にはおよそ46の住居址が,広場の中央にある村の集会所と考えられる大型の建物を中心に展開している。住居址は平面形が1辺4~5mの隅丸方形と,径5~6mの円形のものがあり,それぞれ竪穴式と平地式の別がある。住居は多数の木を立てて芯とし,これにすさを混ぜた泥を塗った壁で造られ,内部に4~6本の柱穴と円形ないし瓢(ひさご)形の炉がある。貯蔵穴は200基以上発見されており,住居のまわりに密集し,底にアワを貯蔵した貯蔵穴も発見されている。墓葬は土壙墓,甕棺(かめかん)墓,木棺墓など250基が発見されている。成人は土壙墓で共同墓地内に,乳幼児は甕棺葬で集落内部に埋められている。土壙墓は頭を西に置く仰臥伸展葬が最も多く,副葬品は土器が主で鉢,缶,尖底瓶または細頸壺が組み合わされて足もとに置かれる。503点にも及ぶ土器は胎土に砂粒を含む粗砂陶が最も多く,炊事用または貯蔵用器に使われた。彩陶は赤地に黒色顔料で人面,魚文,幾何学文を描いたもので,器形も数種類に限られ全体の出土量も少なく,もっぱら祭祀や墓葬などにおける供献用であった。石器には斧,片刃斧,鑿,石庖丁,紡錘車,鏟,鋤があり,骨角器には錐,針,鑿,釣針,銛,鏃,鏟がある。栽培植物にはアワ,カラシナなどがある。土器の底に付着した布の痕跡から紡織も行われていたことがわかる。
半坡の社会は葬制副葬品に差はあまり認められず,基本的に等質の社会で階層の分化はまだおこっていないようであるが,女性を中心とした墓葬などから母系的な氏族社会であったと考えられている。また,多数の頭骨の調査結果では,少数が現代華北人に近似し,多くは現代華南人,インドネシア人に近似している。半坡遺跡の調査は仰韶文化の実体の解明に大きく貢献した。現在,発掘された住居址群には大屋根をかけて保存し,博物館として公開している。
執筆者:横田 禎昭
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中国、陝西(せんせい)省西安(せいあん)市東方にある新石器時代初期の農耕村落遺跡。1954~57年に中国科学院考古研究所によって五次にわたる調査が行われた。北の渭河(いが)と南の秦嶺(しんれい)山脈に挟まれた厚い黄土からなる台地上にあり、溝によって内外に二分されている。内には住居址(し)46、集会場、家畜小屋2、小児墓、外には成人用土壙(どこう)墓、窯址(ようし)があり、200余の貯蔵穴は、内部を重点に両部にまたがっている。貯蔵穴から粟皮(ぞくひ)、蔬菜(そさい)種子が出土したことによって、畑作系農耕の存在が証明され、また家畜飼養もブタ、イヌ、ヒツジ、ニワトリ、ウシ、ウマの骨の出土によって明らかとなった。土器は農耕を反映して、細泥で製作された精美な埦(わん)・盆などの飲食器、同巧の瓶(へい)・長頸壺(ちょうけいこ)の水器、缶・甕(かめ)の煮沸・貯蔵器に分化し、飲食・水器には人面、魚、幾何文(きかもん)などの彩文が付されている。石器は農具、工具、すり石が出現し、打製石器も多いが、小形石斧(せきふ)、石鏟(せきさん)は精巧な磨製品となっている。
[下條信行]
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…入口を入ったところに炉が設けられている。このような方形平面の竪穴住居は,同文化の半坡遺跡にもあり,12m×10mという大型で,床の4本柱は長いが外周の柱と壁は低く,屋根は地面まで葺き下ろしていたと考えられる。また同時に,径6m前後の比較的小型で円形平面の竪穴住居もあり,円錐形の屋根を地面まで葺き下ろしたものと,周壁で支えて地面まで葺き下ろさないものの両者の存在が考えられている。…
※「半坡遺跡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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