博物誌(ルナールの短文集)(読み)はくぶつし(英語表記)Histoires naturelles

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

博物誌(ルナールの短文集)
はくぶつし
Histoires naturelles

フランスの作家ジュール・ルナールの短文集。1896年刊。故郷シャロン近在の村で自然観察のかたわら書きつづったもの。簡潔な文体で豊かなイメージを描き出す詩的散文45項目(後の版では70項目)を収める。機知ユーモアからなる短文は、たとえば「蝶(ちょう)――二つ折りにしたこの恋文は、花の宛名(あてな)をさがしている」、「蛍――いったい、どうしたんだろう? もう夜の9時なのに、あの家では、まだあかりがついている」、「蛇――長すぎる」など、気がきいていて美しい。ルナールは自ら「イマージュ(映像)の猟人(かりゅうど)」と名のるが、幻視者としての詩情は、俳諧(はいかい)的散文のなかにみごとに開花している。

[窪田般彌]

『岸田国士訳『博物誌』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android