原子力三原則(読み)ゲンシリョクサンゲンソク

デジタル大辞泉 「原子力三原則」の意味・読み・例文・類語

げんしりょく‐さんげんそく【原子力三原則】

原子力研究開発利用は、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果公開されるべしとする、民主・自主・公開の三原則原子力基本法に規定されている。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「原子力三原則」の意味・わかりやすい解説

原子力三原則 (げんしりょくさんげんそく)

日本の原子力開発利用行政の基本的指針を定める原子力基本法の第2条には〈原子力の研究,開発及び利用は,平和の目的に限り,安全の確保を旨として,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとする〉とあり,この民主,自主,公開の原則を原子力三原則,または原子力平和利用三原則という。原子力三原則は,第2次大戦後占領下で禁止されていた原子力研究開始の是非やその進め方をめぐる論議なかから生まれた。しかしその成立の直接の契機となったのは,1954年3月2日保守3党が学界の論議を無視して,2億3500万円の原子炉築造予算を突如国会提出し,成立させたことであった。この情勢背景学術会議の原子核特別委員会は,原子力研究への協力の最低条件として,兵器研究の禁止の保証,研究情報の公開と外国からの秘密データを受けとらぬこと,研究者を研究能力以外の理由で差別しないことの3点をとりまとめたが,これが同年4月の17回総会の三原則声明の基礎となったもので,三原則についての最も基本的な考え方を示すものといえる。さらに日米原子力協定仮調印やそれにもとづく濃縮ウランの受入れのための原子炉設置など急速な政府側の措置に対し,学術会議18回総会は6項目から成る対政府申入れを行ったが,それは原子力三原則を具体化したもので,(1)平和目的への限定,(2)国民への公開,(3)民主的運営と自主性--安易な外国依存の排除,(4)研究機関要員の人権尊重,(5)放射能への万全の対策,(6)核物質の管理が要求されている。原子力基本法の表現は微妙にニュアンスが異なっている。78年10月に原子力船〈むつ〉事件を契機に原子力行政体制の見直しが行われ,新たに原子力安全委員会が発足したが,それに伴う基本法の改正に際して,第2条に括弧内の表現が新たに挿入され,三原則は原子力発電などの安全確保のためにも必須の条件として認められることとなっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「原子力三原則」の意味・わかりやすい解説

原子力三原則【げんしりょくさんげんそく】

1954年3月,中曽根康弘を中心とする国会議員が,自由・改進・日本自由の3党に働きかけ,3党が突如原子炉予算を提出・可決した。これに対し,4月23日日本学術会議は原子力問題に対する政府の態度を非難,核兵器研究の拒否と,1.研究の民主的な運営,2.日本国民の自主的運営,3.一切の情報の完全公開の三原則を声明し,同年10月の第18回総会で可決した。日本学術会議では,52年に原子力の平和利用と原子炉建設について政府に働きかけるべきか否か,大きな論争があり,内部に検討のための委員会を設置していたからである。この原子力三原則は物理学者伏見康治が,原子炉予算の可決を受けて,急遽とりまとめたものである。これが,原子力基本法第1章第2条に盛り込まれ,日本の原子力開発の基本方針となり,諸外国の原子力法には見られない大きな特徴とされてきた。
→関連項目武谷三男

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の原子力三原則の言及

【原子力】より

…同年,原子力利用準備委員会が発足し,原子力海外調査団の派遣,濃縮ウラン受入れのための日米原子力研究協定の調印,第1回ジュネーブ会議への参加などが進められた。56年には原子力基本法が発効し,民主,自主,公開のいわゆる原子力三原則を法律によって定め,日本の原子力開発の基本姿勢となった。同年,原子力委員会が設置されるとともに,日本原子力研究所,原子燃料公社(のち動力炉・核燃料開発事業団となり,1998年10月より核燃料サイクル開発機構)が設立され開発母体となった。…

【原子力産業】より

…日本でも,この演説の直後,54年3月に総額2億3500万円の原子力予算が成立した。同年4月,日本学術会議が〈公開・民主・自主〉の原子力平和利用三原則(原子力三原則)のもとに原子力の研究・開発・利用を進めるべきことを唱えた声明を決議,翌55年には,この原子力三原則を取り入れた原子力基本法,原子力委員会設置法,原子力局設置に関する法律の原子力三法が成立した。56年1月に政府の原子力委員会,同年3月に民間の日本原子力産業会議(経団連と電気事業連合会が中心となって組織)が発足,さらに5月に科学技術庁,6月には特殊法人として日本原子力研究所が設立され,官民の研究開発体制は急速に整えられた。…

※「原子力三原則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ビャンビャン麺

小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...

ビャンビャン麺の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android