原田庄(読み)はらだのしよう

日本歴史地名大系 「原田庄」の解説

原田庄
はらだのしよう

鎌倉時代からみえる庄園。庄域は現掛川市の西部から北部にかけての原野谷はらのや川流域に細長く広がる。同川中流のやや開けた平野と左岸山裾および右岸の段丘上に本郷ほんごう西山にしやま細谷ほそや幡鎌はたかま吉岡よしおかなどがまとまって位置し、同川上流の谷間に寺田てらだ高山たかやま丹間たんま孕石はらみいし萩間はぎま井尻いじりなどが散在する。本郷は「和名抄」にみえる佐野さや幡羅はら郷の中心地であろう。現奈良県天川てんかわ村の大峯山おおみねさん寺が所蔵する梵鐘の追刻は天慶七年(九四四)六月二日の年紀をもち「遠江国佐野郡原田郷 長福寺鐘」とあるが、この長福ちようふく寺は本郷に現存する。また本郷の佐夜さよ八幡宮(現八幡神社)旧蔵の天正一五年(一五八七)五月吉日の鰐口銘に「奉懸五所大菩薩鰐口一流 遠江原本郷」、「円通松堂禅師語録」巻四の長福寺大日安座点眼に「当荘五所・西宮両大明神」とある。五所は佐夜八幡宮、西宮は原野谷川を挟んで本郷の対岸にある西山西之宮にしのみや神社に比定できる。本郷は庄域を基盤とする在地武士原氏にゆかりが深く、長福寺は原頼景によって、一族の松堂高盛を開山とする曹洞宗寺院として再興されており、また照月しようげつ寺の隣接地には原氏の墓所がある。長福寺に南接する地に古城という小字が残り、本郷東の南、殿谷とんのや集落との間の山上には殿谷城跡がある。これらは原氏の築いた中世城郭と考えられ、明応七年(一四九八)一一月一三日の今川氏親判物(孕石文書)にみえる「原要害」とは前者か。原野谷川右岸にある吉岡には原頼郷が頼景の娘春林尼を開基として建立した春林しゆんりん院があり、原氏の発給文書や系図を伝えている。吉岡の北方にある幡鎌は原氏一族幡鎌氏の本拠で、集落北の丘麓にある最福さいふく寺は「円通松堂禅師語録」を所蔵。本郷より少し上流の寺田は、原氏一族寺田氏の本拠だが、旧名を原田といい(遠江国風土記伝)、また原殿神廟の別名をもつ原神社があって、ある時期には当庄の中心だったかもしれない。寺田より少し上流の高山には、松堂の師大輝霊曜が永享九年(一四三七)七月に開いた曹洞宗円通えんつう(現廃寺)があり(円通松堂禅師語録)、松堂も文明年間(一四六九―八七)に住した。孕石や丹間より上流は本郷に属し、原氏一族孕石氏の勢力範囲で、中心の孕石には孕石天神社や円通寺(現廃寺)がある。

〔本家・領家〕

原田庄の名は、弘長三年(一二六三)一月、地頭代と領家使が立会って作成した前年分の原田庄細谷村正検取帳(案、東寺百合文書、以下断りのない限り同文書)に初めて現れる。文永二年(一二六五)二月七日の遠江国三代起請地并三社領注文案(教王護国寺文書)に「三代御起請地」の一つとして「原田庄 宝金剛院」とあり、本家が判明する。


原田庄
はらだのしよう

現前原市西部のひがし神在かみありおよび糸島いとしま二丈にじよう満吉みつよし付近に比定される皇室領庄園。本家は粟田あわた(京都青蓮院)、地頭は原田氏、のち少弐(武藤)氏。庄内に楠田くすでん寺、塔原とうげん(現二丈町)があった。寿永元年(一一八二)一二月日の大蔵某寄進状写(藤瀬文書/平安遺文一〇)に「原田庄」とみえ、庄内飽田あくた郷の田地一町が大宰少弐兼地頭大蔵某(原田種直か)から塔原寺観音堂に修正・二季彼岸料として寄進されたという。種直は治承・寿永の乱で平家方についたため、当庄地頭職鎌倉幕府によって没収され、建久二年(一一九一)に種直跡三千七〇〇町が武藤(少弐)資頼に与えられたといい(「武藤系図」続群書類従)、この内に当庄が含まれていたと考えられ、以後地頭職は少弐氏に伝領された。ところで寿永三年、後白河上皇の所領「筑前国田原庄」などが粟田宮に寄進されているが(同年八月二六日「後白河上皇院宣写」天理図書館所蔵吉田宮文書/平安遺文一〇)、建長八年(一二五六)九月二九日の崇徳院御影堂領目録(華頂要略/鎌倉遺文一一)に粟田宮社領として原田庄とみえることから、これは当庄の誤記と考えられる。


原田庄
はるだのしよう

ひろ川が旧筑後川流路に合流する左岸に位置する庄園で、大宰府領から宇佐宮の神宮寺弥勒寺喜多きた院領となる。承徳三年(一〇九九)二月二九日、大宰権帥大江匡房は宇佐御許おもと山に僧六口を置いて法華三昧を勤修させたが、筑後国原田庄の地利をもって仏聖灯油僧侶供料などに宛てた(「大江匡房敬白文」石清水八幡宮記録)。鎌倉初期とみられる弥勒寺喜多院所領注進状(石清水文書/大日本古文書四―二)に筑後国「原田庄五十丁」とみえる。「中右記」大治四年(一一二九)五月一七日条によると、大宰大弐藤原経忠の申請により、陣定においてかつて大江匡房が寄進した「鎮西御許山領原田庄」を停止すべきか否かが議された。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android