さび【寂】
《動詞「さ(寂)ぶ」の連用形から》
1 古びて味わいのあること。枯れた渋い趣。「寂のある茶碗」
2 閑寂枯淡の趣。「寂に徹した境地」
3 声の質で、低く渋みのあるもの。「寂のある声」
4 謡曲・語り物などの声の質で、声帯を強く震わせて発する、調子の低いもの。
5 連歌・俳諧、特に、蕉風俳諧で重んじられた理念。中世の幽玄・わびの美意識にたち、もの静かで落ち着いた奥ゆかしい風情が、洗練されて自然と外ににおい出たもの。閑寂さが芸術化された句の情調。→撓(しおり) →細み →軽み
じゃく【寂】
[名]
1 仏語。仏道の修行により、生死を超越した悟りの境地に入ること。
2 僧が死んだことを表す語。年月日の下に付けて用いる。「明治九年寂」
[ト・タル][文][形動タリ]まったく音がしないさま。静まりかえっているさま。ひっそり。「寂とした山寺の参道」
せき【寂】
[ト・タル][文][形動タリ]ひっそりとして静かなさま。「寂として声なし」
「生命の流れの―として充実した感じが」〈宮本・伸子〉
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さび【寂】
〔動詞「寂びる」の連用形から〕
① 古びて趣のあること。閑寂の趣。さびしみ。しずけさ。
② 枯れて渋みのあること。また、太くてすごみのあること。 「 -のある声」 「 -のきいた声」
③ しおり・細みなどとともに、蕉風俳諧の基調をなす静かで落ち着いた俳諧的境地・表現美。 → わび ・しおり ・細み ・かるみ
じゃく【寂】
一
( 名 ) 〘仏〙
① 煩悩ぼんのうを離れ、悟りに達すること。涅槃ねはん。
② 僧侶の死を表す語。死亡の年月日の下に付けて用いる。 「昭和一〇年-」
二
( トタル ) [文] 形動タリ 静かなさま。せき。 「広い家の中-として何の物音も無い/良人の自白 尚江」
出典 三省堂大辞林 第三版について 情報
じゃく【寂】
〘名〙
① 仏語。仏道修行により有無執着の迷いの境地を脱却して、悟りの境界(きょうがい)にはいること。
※性霊集‐序(835頃)「金剛薩埵扣二大日之寂一後、所謂第八折負者吾師是也」 〔観普賢経〕
② (形動タリ) 人声がなく、ひっそりとして静かなこと。物音のしないこと。また、そのさま。
※万葉(8C後)一七・晩春三日遊覧詩序文「嗟乎今日所レ恨徳星已少歟。若不二扣レ寂含一レ章何以攄二逍遙之趣一」
※化銀杏(1896)〈泉鏡花〉一五「其の寂(ジャク)たること死せるが如き」
③ 僧の死をあらわす語。年月日などの下に置いて使う。「明治九年寂」
※法然上人行状画図(1307‐16頃)四六「鎮西の聖光房辨長〈略〉ねぶるがごとくして寂に帰す」
※俳諧・仙台大矢数(1679)下「対馬殿なげかね中間(ま)申には けいせい狂ひじゃくは追腹」
じゃく‐・す【寂】
〘自サ変〙 僧が死ぬ。入寂(にゅうじゃく)する。
※
元亨釈書(1322)一一「釈以円。博士江以言之子也〈略〉門人曰、此暁已寂」
せき【寂】
〘名〙 (形動タリ) ひっそりと静かであること。また、そのさま。現代では、多く「
寂として」の形で用いられる。
※太平記(14C後)二〇「其の比諸葛孔明と云賢才の人、世を避け身を捨てて、蜀の南陽山に在けるが、寂(セキ)を釣り閑に耕て歌ふ」
※わかれ(1898)〈
国木田独歩〉「遠き林をわたる風の音の幽かに聞ゆるのみ、四辺
(あたり)は寂
(セキ)として声なし」 〔太平広記‐二七四・崔護〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報