(読み)じゃく

精選版 日本国語大辞典「寂」の解説

じゃく【寂】

〘名〙
① 仏語。仏道修行により有無執着の迷いの境地を脱却して、悟りの境界(きょうがい)にはいること。
※性霊集‐序(835頃)「金剛薩埵扣大日之寂後、所謂第八折負者吾師是也」 〔観普賢経〕
② (形動タリ) 人声がなく、ひっそりとして静かなこと。物音のしないこと。また、そのさま。
※万葉(8C後)一七・晩春三日遊覧詩序文「嗟乎今日所恨徳星已少歟。若不寂含一レ章何以攄逍遙之趣
※化銀杏(1896)〈泉鏡花〉一五「其の寂(ジャク)たること死せるが如き」
③ 僧の死をあらわす語。年月日などの下に置いて使う。「明治九年寂」
※法然上人行状画図(1307‐16頃)四六「鎮西の聖光房辨長〈略〉ねぶるがごとくして寂に帰す」
④ 果て。最後。→寂は雨
※俳諧・仙台大矢数(1679)下「対馬殿なげかね中間(ま)申には けいせい狂ひじゃくは追腹」

せき【寂】

〘名〙 (形動タリ) ひっそりと静かであること。また、そのさま。現代では、多く「寂として」の形で用いられる。
※太平記(14C後)二〇「其の比諸葛孔明と云賢才の人、世を避け身を捨てて、の南陽山に在けるが、寂(セキ)を釣り閑に耕て歌ふ」
※わかれ(1898)〈国木田独歩〉「遠き林をわたる風の音のかに聞ゆるのみ、四辺(あたり)は寂(セキ)として声なし」 〔太平広記‐二七四・崔護〕

じゃく‐・す【寂】

〘自サ変〙 僧が死ぬ。入寂(にゅうじゃく)する。
※元亨釈書(1322)一一「釈以円。博士江以言之子也〈略〉門人曰、此暁已寂」

さび・る【寂】

〘自ラ下二〙 ⇒さびれる(寂)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「寂」の解説

さび【寂】

《動詞「さ(寂)ぶ」の連用形から》
古びて味わいのあること。枯れた渋い趣。「のある茶碗」
閑寂枯淡の趣。「に徹した境地」
声の質で、低く渋みのあるもの。「のある声」
謡曲・語り物などの声の質で、声帯を強く震わせて発する、調子の低いもの。
連歌・俳諧、特に、蕉風俳諧で重んじられた理念。中世の幽玄わびの美意識にたち、もの静かで落ち着いた奥ゆかしい風情が、洗練されて自然と外ににおい出たもの。閑寂さが芸術化された句の情調。→しおり細み軽み

じゃく【寂】[漢字項目]

常用漢字] [音]ジャク(呉) セキ(漢) [訓]さび さびしい さびれる
〈ジャク〉
ひっそりと静かなさま。さびしい。「寂寂寂然じゃくねん寂寞じゃくまく閑寂静寂幽寂
僧が死ぬこと。「示寂入寂
〈セキ〉1に同じ。「寂寂寂然せきぜん寂寞せきばく寂寥せきりょう
[名のり]しず・ちか・やす

じゃく【寂】

[名]
仏語。仏道の修行により、生死を超越した悟りの境地に入ること。
僧が死んだことを表す語。年月日の下に付けて用いる。「明治九年
[ト・タル][文][形動タリ]まったく音がしないさま。静まりかえっているさま。ひっそり。「とした山寺の参道」
[類語]

せき【寂】

[ト・タル][文][形動タリ]ひっそりとして静かなさま。「として声なし」
「生命の流れの―として充実した感じが」〈宮本伸子
[類語]静かひそやかしめやか静寂静粛静閑閑静閑散閑寂清閑しじま森閑深深しんしん森森しんしん沈沈ちんちん寂然せきぜん・じゃくねん寂寂せきせき・じゃくじゃくげき闃然げきぜん粛然

せき【寂】[漢字項目]

じゃく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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