撓(読み)タワ

デジタル大辞泉 「撓」の意味・読み・例文・類語

たわ【×撓】

[形動][文][ナリ]「たわわ」に同じ。
「一歳柿などはすでに枝も―に実っている」〈蘆花・思出の記〉
[名]
1 山の尾根のくぼんで低くなった所。山の鞍部あんぶ。たおり。
「山の―より御船を引き越して逃げ上り行いでましき」〈記・中〉
2 枕などに押されてついた髪の癖。
「朝ね髪誰が手枕に―つけてけさは形見に振り越してみる」〈金葉・恋上〉

たわ‐わ【×撓】

[形動][文][ナリ]実の重さなどで木の枝などがしなうさま。たわ。「枝も撓に実る」
[類語]曲(が)る・折れ曲がる・屈曲する・屈折する・曲折する・湾曲する・反る・たわむ・しなう

しおり〔しをり〕【×撓/▽萎】

1 (ふつう「シオリ」と書く)能で、泣くようすを表現する型。手の指を伸ばしてそろえ、斜めに顔の前に上げ、面おもてを少しうつむかせる。
2 蕉風俳諧の根本理念の一。対象に対する作者の繊細な感情が、自然に余情として句にあらわれたもの。→寂さび →細み →軽み

とう【撓】[漢字項目]

[音]トウ(タウ)(慣) ドウ(ダウ)(漢) [訓]たわむ たわめる みだす
たわむ。たわめる。「屈撓・不撓」

とお‐お〔とをを〕【×撓】

[形動ナリ]たわみ曲がるさま。たわわ。
「秋萩の枝も―におく露のけさ消えぬとも色に出でめや」〈新古今・恋一〉

たお〔たを〕【×撓】

1 山頂の道のある所。峠。〈日葡〉
2 山と山の間のくぼまった所。鞍部。〈文明本節用集〉

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精選版 日本国語大辞典 「撓」の意味・読み・例文・類語

しないしなひ【撓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「しなう(撓)」の連用形の名詞化 )
  2. ① しなうこと。しなやかに曲線をなしていること。また、そのもの。柳の枝や藤の花房などのしなやかにたわんでいるものなどについていう。しなえ。
    1. [初出の実例]「青柳が 之名比(シなヒ)を見れば 今さかりなりや 今さかりなりや」(出典:催馬楽(7C後‐8C)大路)
    2. 「藤の花は、しなひながく」(出典:枕草子(10C終)三七)
  3. ② 身のこなしのしなやかなこと。また、その姿態。
    1. [初出の実例]「身のしねへなざあ、ごうせいにいい女だ」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)三)
  4. ③ 武具の名。近世の軍陣の標識とする指物(さしもの)の一つ。細くしなわせた長竿に切裂(きっさき)の幟(のぼり)を入れて具足の受筒にさす。一本撓、二本撓、三本撓の各種がある。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. 撓<b>③</b>〈武用弁略〉
      撓③〈武用弁略〉

たわ【撓】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ① 山の尾根などのくぼんで低くなった所。山の鞍部(あんぶ)。たおり。たお。
      1. [初出の実例]「益見畏みて、山の多和(タワ)より御船を引き越して逃げ上り行でましき」(出典:古事記(712)中)
    2. ② 枕などに押されて髪についた癖。
      1. [初出の実例]「忘れずもおもほゆるかな朝な朝なしが黒髪のねくたれのたわ」(出典:順集(983頃))
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 =たわわ(撓)
    1. [初出の実例]「時わかずふれる雪かとみる迄に垣根もたわにさける卯花〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)夏・一五三)

たおたを【撓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「たおり(撓)」の略 )
  2. ① 山頂の道のあるところ。峠。
    1. [初出の実例]「Tauouo(タヲヲ) コユル」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  3. ② 山と山の間のくぼまっている所。鞍部。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「たを 山の低き処を云名。多和美、多遠牟、登遠々なと活(はたら)けり」(出典:菊池俗言考(1854))

たおりたをり【撓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「たおる(撓)」の連用形の名詞化 ) もののたわんで低まった所。山の稜線の低くくぼんだ所。また、山の峰。峠。たわ。
    1. [初出の実例]「婢刀自女 年、鼻太乎理爾黒子、右頸下黒子」(出典:東南院文書‐天平勝宝二年(750)九月一四日・奴婢見来帳)
    2. 「あしひきの 山の多乎理(タヲリ)に この見ゆる 天の白雲」(出典:万葉集(8C後)一八・四一二二)

しいわり【撓】

  1. [ 1 ] ( 動詞「しわる(撓)」の連用形「しわり」の変化した語 ) たわみ曲がること。
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ( 多く「と」を伴って用いる ) たわみ曲がるさま。ひいわり。
    1. [初出の実例]「とびらは弓をはるごとく、しいはりしいはりとたはむ所を、エエイうんと押しければ」(出典:浄瑠璃・悦賀楽平太(1692頃)役目尽し)

とお‐おとをを【撓】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 たわみしなうさま。たわわなさま。とお。
    1. [初出の実例]「打竹の、登遠遠(トヲヲ)登遠遠(トヲヲ)に〈此の七字は音を以ゐよ〉天の真魚咋(まなぐひ)献る」(出典:古事記(712)上)

たわみ【撓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「たわむ(撓)」の連用形の名詞化 ) 板や棒などに力が加わって湾曲すること。また、その程度。転じて、気持をゆるめること。弛緩(しかん)。
    1. [初出の実例]「君の御ためたはみなくすすめたてまつり給へりけむ」(出典:今鏡(1170)一)

おおりををり【撓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「おおる(撓)」の連用形の名詞化 ) 花や葉がしげって枝がしなっていること。また、そのようになったもの。
    1. [初出の実例]「萩の花咲きの乎再入(ヲをり)を見よとかも月夜の清き恋まさらくに」(出典:万葉集(8C後)一〇・二二二八)

とおとを【撓】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 たわみしなうさま。とおお。たわわ。
    1. [初出の実例]「橘の登乎(トヲ)の橘八つ代にも吾(あれ)は忘れじこの橘を」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇五八)

たわ‐わ【撓】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 (木の枝に多くの実がなったりして)枝がしなうさま。たわ。
    1. [初出の実例]「をりてみばおちぞしぬべき秋はぎの枝もたわわにおけるしら露〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋上・二二三)

しなえしなへ【撓】

  1. 〘 名詞 〙 =しない(撓)
    1. [初出の実例]「こむらさき藤田のふぢのしなへよりながくすめかしあくまでに見む」(出典:評判記・役者評判蚰蜒(1674)藤田小平次)

たり【撓】

  1. 〘 名詞 〙 横に渡した木などに狂いの出ること。転じて、欠点。短所。

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普及版 字通 「撓」の読み・字形・画数・意味

撓
15画

[字音] ドウ(ダウ)・ジョウ(ゼウ)
[字訓] たわむ・みだす・かがむ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は堯(尭)(ぎよう)。堯に鐃(どう)・饒(じよう)の声がある。〔説文〕十二上に「擾(みだ)すなり」という。堯は窯に土器を積み重ねておく形。ゆえに撓(たわ)む意となる。これを窯中に遶(めぐ)らし、高熱を加えて焼く。土器を所狭く並べたてるので、「擾る」という訓を生ずるのであろう。人に及ぼしては(じよう)といい、猥(みだ)りがわしいことをいう。

[訓義]
1. たわむ、重さでまがる、きしむ。
2. みだす、かきみだす、ちらす。
3. かがむ、よわまる、へる。
4. 揉と通じ、かがむ、たわむ、うごく。
5. 繞と通じ、めぐる、まとう。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕撓 タハム・メグル・ツタナシ・スヱ・ヨロシ・ウル・オヤマス・ネヤス・ミダル・ウゴカス・タヲヤカナリ・ヲル・ミダス 〔立〕撓 ネヤス・タヲヤカナリ・カリ・メグル・ヨロシ・ネタム・ヲゴカス・スルル・マガル・ミダル・ナヤマス・タハメリ・サカシ

[語系]
撓n、繞・遶njiは声義近く、みな焼成のために土器をめぐらす意で堯の声義を承ける。擾njiuは声義の近い語であるが、憂えによって思いみだれる意である。

[熟語]
撓壊▶・撓滑▶・撓曲▶・撓屈▶・撓勾▶・撓鉤▶・撓挫▶・撓辞▶・撓情▶・撓折▶・撓節▶・撓退▶・撓挑▶・撓直▶・撓▶・撓撓▶・撓敗▶・撓伏▶・撓法▶・撓北▶・撓悶▶・撓抑▶・撓乱▶
[下接語]
枉撓・回撓・陥撓・危撓・驚撓・曲撓・屈撓・鼓撓・私撓・色撓・柔撓・情撓・侵撓・振撓・折撓・敗撓・煩撓・不撓・膚撓・風撓・利撓

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世界大百科事典(旧版)内の撓の言及

【竹刀】より

…竹刀の長さは普通3尺6寸(約110cm)以上3尺9寸(約118cm)以内のものを用いることになっている。もともと〈しない〉は〈しなう〉という意味から〈撓〉と書いた。〈撓〉は戦国時代の指物(さしもの)の一種である。…

※「撓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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