取持・執持(読み)とりもつ

精選版 日本国語大辞典 「取持・執持」の意味・読み・例文・類語

とり‐も・つ【取持・執持】

〘他タ五(四)〙
① 手に取って持つ。手に握る。
書紀(720)皇極三年正月(北野本南北朝期訓)「皮鞋(みくつ)の毱(まり)の随(まま)に脱(ぬ)け落(お)つるを候(まも)りて掌(たなこころ)の中に取置(トリモチ)て前(すす)みて」
② 身に引きうけてとり行なう。とりしきってする。責任をもって政務などにあたる。
万葉(8C後)一七・四〇〇八「大君の 命(みこと)かしこみ 食(を)す国の こと登理毛知(トリモチ)て」
双方の間に立ってとりなす。なかだちをする。周旋する。
※増鏡(1368‐76頃)一五「かねてより宣旨に従へりしつは物どもを、忍びて召す。源中納言具行とりもちて事行ひけり」
④ 引き受けて世話をする。もてなしをする。接待する。
※能因本枕(10C終)三〇六「物くはせいとほしがり、その事となく思ひたるに、まつはれ追従し、とり持てまどふ」
⑤ ある考えをしっかり心にいだく。執着する。
源氏(1001‐14頃)総角「宮もあやにくにとりもちて、責め給しかば」

とり‐もた・り【取持・執持】

〘他ラ変〙 (「もたり」は「もちあり」の変化した語)
① 手に取って持っている。たずさえている。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「神ひとのてにとりもたる榊葉にゆふかけそふるふかきよの霜」
② 身に引きうけて、とり行なっている。責任を持ってことにあたっている。
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「乃ち、忌部の首(をふし)遠祖、太玉の命をして執取(トリモタラ)使(しめ)て、広(ひろ)く厚(あつ)く、称辞(たたへことを)へて祈啓(のみまう)さしむ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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