取成す(読み)トリナス

デジタル大辞泉 「取成す」の意味・読み・例文・類語

とり‐な・す【取(り)成す/執(り)成す】

[動サ五(四)]
対立する二者の間に立って、事態が好転するようにうまくとりはからう。また、その場の気まずい雰囲気をうまくまとめる。「座を―・す」
なかだちをする。仲介する。「面会できるよう―・す」
手に取って別の物に変える。
湯津爪櫛ゆつつまぐしにその童女を―・して」〈・上〉
取り沙汰する。
「作りごとめきて―・す人ものし給ひければ」〈夕顔
実際とは違うように振る舞う。
「思はぬ人を思ふ顔に―・す言の葉多かるものと」〈総角
調子を合わせる。
「あまり情にひきこめられて、―・せば、あだめく」〈帚木
[可能]とりなせる
[類語]仲介取り持つ橋渡し仲立ち媒介取り次ぐ介する世話取り持ち口利き口入れ口添え肝煎きもい斡旋あっせん周旋紹介仲買媒酌お節介仲裁調停架け橋渡りを付ける引き合わせる中に立つ間に立つ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「取成す」の意味・読み・例文・類語

とり‐な・す【取成・執成】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. ある物を手にとって、他の物に変えてしまう。
    1. [初出の実例]「湯津爪櫛(ゆつのつまくし)に其の童女を取成(トリナシ)て」(出典古事記(712)上(道祥本訓))
  3. 物を手に持って、扱う。また、物をある状態にして扱う。
    1. [初出の実例]「御殿油(とのあぶら)遠くとりなして」(出典:栄花物語(1028‐92頃)浦々の別)
  4. 実際とは違ったもののように受け取って理解し、また、とりざたする。また、わざと…とみなす。
    1. [初出の実例]「つくりごとめきて、とりなす人ものし給ければ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
  5. そのようなふりをする。実際とは違ったように見せかける。
    1. [初出の実例]「思はぬ人を思ふ顔にとりなす言の葉」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
  6. うまく取り扱う。じょうずに処置する。とりさばく。
    1. [初出の実例]「鬼の間に人音のする誰ならん弓とる方の頭の中将 左の心もことにえんありてとりなしたり」(出典:弁内侍日記(1278頃)建長元年一二月一八日)
  7. 気にいるように応対する。うまくお相手をする。調子を合わせる。
    1. [初出の実例]「台盤にものすゑて、とりなしつつまゐる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
  8. 具合の悪い状態を、間にはいって取り計らい、好転させる。よいように取り計らう。間に立って周旋して、うまくその場を納める。
    1. [初出の実例]「さることやありし、と問はせ給へば、知らず、何とも知らで侍りしを、行成の朝臣のとりなしたるにや侍らん、と申せば」(出典:枕草子(10C終)一三七)
  9. 人を紹介する。仲介する。斡旋(あっせん)する。
  10. 連歌で、取成付けの付けかたをする。
    1. [初出の実例]「前句の仮寝を苅根に取成て」(出典:花能万賀喜(1452))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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