屋内の人物を中心とした情景を,より自由に展開させるために,建物の屋根や天井を省き,斜め上からのぞき込むように描く構図法。三次元空間の事物を俯瞰的に描くことによって画面に再現しようとするもので,いわゆるやまと絵系絵画において必然的に派生し,平安・鎌倉時代以降,絵巻物や大画面説話画などに常套的に用いられた。室内空間は基本的に柱,梁(はり),長押(なげし)によってつくり出されるが,奥行きを示す梁,長押の線はしばしば逆遠近法的(遠近法)に引かれ,また建具,御簾(みす)などを適宜取り払うことによって,視覚効果上,室内人物をより明瞭に表し,その空間を豊かに印象づけることが多い。おそらく平安中期ころ,物語絵巻の発生とともに成立したと考えられ,12世紀前半の徳川・五島本《源氏物語絵巻》にその典型例がみられる。なお最も早い実例として,1069年(延久1)法隆寺絵殿の《聖徳太子伝障子絵》(東京国立博物館)の大画面中のものがあげられる。
→絵巻
執筆者:田口 栄一
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屋根や天井を取り除いて,高い視点からのぞきこんだように室内の情景を描く画面構成法。物語の絵画化が盛んとなった平安時代に工夫されたと推定される。この手法の最も古い例は,「聖徳太子伝絵」(1069年,法隆寺絵殿)の太子産養の儀式の場面にみられる。「源氏物語絵巻」のような,室内の出来事を描かなければならない王朝つくり物語の画面に広く用いられた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…これら画面形式,画態はしだいに混じり合い,多様な絵巻表現を生み出してゆく。また絵巻にしばしばみられる構図法としては,屋根や天井を取り去って室内を俯瞰するいわゆる吹抜屋台や,同一画面上に次々と変化する事象を円環的に描くといった異時同図法があげられる。
[歴史的概観]
日本の絵巻の最古の遺品《絵因果経》は,経文の上部に経意を表す絵を描く形式のもので,中国からもたらされた画巻にもとづいて8世紀後半ころ,写経所の画師によって書写された。…
※「吹抜屋台」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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