中世において和与,すなわち無償贈与や紛争和解にともなって作成された文書をいう。ただし前者の贈与(他人和与)にともなう和与状は避文(さりぶみ)との区別がつけがたく,きわめてまれで特殊な場合であり,普通,和与状というと後者を指す。幕府訴訟法においては,訴訟途中で和解が成立すると,和与と頭書し,和与の諸条件を記し,〈仍和与之状如件〉などと書きとめる和与状が訴人論人の間で交換され,幕府はそれを担当奉行の和与状裏封と和与の裁許状によって公認する。このような幕府法上の和与で特徴的なのは,公家との間での調停的和与であって,荘園の下地中分(したじちゆうぶん)の和与はその代表である。なお和与は幕府法の外部,社会の各レベルでも広く行われており,それに基づく和与状および荘園本所などによる和与の裁許状の伝存例が少なく,その形式も幕府法のように整ったものではないが,地域的紛争の処理やその領主による公認などの重要事実を示している。
執筆者:保立 道久
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中世において和与が成立して取り交わされる契約書。和与とは和解して、提起した訴訟を取り下げることをいうが、鎌倉時代の中期以降、地頭(じとう)権の伸張に伴って荘園(しょうえん)領主と地頭との間に紛争が頻発し、その解決を求めて、しきりに幕府に訴訟が持ち込まれた。しかし、この幕府の裁判によらず両者の直接の話し合いによって解決する方法もとられた。これが和与である。訴訟進行中に行われる場合と、それに至らないで行われる場合がある。和与状は当事者双方の連署するものと、各自別々に作成して署名するものとの2種があり、幕府奉行人(ぶぎょうにん)の裏判(うらはん)を受けるのを例とした。また幕府からは和与を認可する旨の下知(げち)状の形式をとった裁許状が出された。なお和与の結集を図絵した和与絵図が描かれる場合もあった。これに対し裁許状のないものを私和与という。
[奥野中彦]
『平山行三著『和与の研究』(1964・吉川弘文館)』
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訴訟の途中などで紛争当事者同士の和解(和与)が成立したときに作成される文書。同内容のものを訴論人(そろんにん)が独自に作成して交換する場合と,同文の文書2通を作成してともに1通を保存する場合がある。和与が成立すると,鎌倉幕府はこれを保証するため,和与状の裏に担当奉行の証判(裏封(うらふう))を与え,かつ下知状(和与の裁許状)を発給した。これがないものを私和与といい,のちに訴訟となったときも証拠として採用されない不利益をこうむった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…とくに鎌倉幕府の裁判では積極的に和与が奨励され,裁判手続上のどの段階でも和与することが可能であった。この場合,和与条件を列挙し,その遵守を誓約する旨を記した和与状を交換し,さらに和与に公的な効力を付与するための下知状が下付されるのが普通であった。地頭と領家の間に成立した和与の結果,いわゆる下地中分(したじちゆうぶん)などが行われた例が多い。…
※「和与状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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