(1)贈与を指す。中世において他の強制をうけない自発的な好意・志から,無償で動産・不動産などを与える行為を和与とよんだ。したがって神仏に対する寄進,血縁・非血縁者に対する譲与や充行(あておこない)なども広義の和与に属し,法的性格において共通するものがある。このうち非血縁者に対する贈与は他人和与とよばれ,他人和与の物は悔返(くいかえし)ができないという法理が公家法の中に生まれ,さらに鎌倉幕府法にも移入されて,ほぼ天下の大法として定着した。ただし幕府は〈他人〉の範囲を限定し,またときには他人和与そのものを禁止するなど,この法理に対して強い嫌悪感を示している。これは御家人所領の散逸を防ぐという理由のほか,幕府主従制の根本である恩給所領が,この法理によって取りもどし(収公)不能となることを危惧したためとする説もある。
(2)和解を指す。中世の紛争解決手段としては裁判,自力救済,権力による一方的強制などのほかに,当事者間の和解が大きな部分を占めており,これを和与と称した。和解の条件もしくは結果として,自発的な無償贈与が含まれていたために,この言葉が用いられるようになったとされている。公権力の行う裁判と無関係に行われる和与は,中人(ちゆうにん)などとよばれた第三者の調停によって成立するものが多く,この場合和与の効力は中人を含む地域社会の強制力によって保証されていたと考えられる。なお,いったん裁判所に提訴された紛争で,判決以前の段階で和与が成立するものも多かった。とくに鎌倉幕府の裁判では積極的に和与が奨励され,裁判手続上のどの段階でも和与することが可能であった。この場合,和与条件を列挙し,その遵守を誓約する旨を記した和与状を交換し,さらに和与に公的な効力を付与するための下知状が下付されるのが普通であった。地頭と領家の間に成立した和与の結果,いわゆる下地中分(したじちゆうぶん)などが行われた例が多い。
→和与状
執筆者:笠松 宏至
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中世において、子孫妻妾(さいしょう)に対する贈与を譲与(処分)とよんだのに対して、それ以外の者に対する贈与を意味した。したがって、「他人和与」とよんだこともある。譲与はいつでも取り消せたが、和与は取り消せなかった。また中世では和与の語が和解の意味に用いられたことがあるが、これは、和解の場合には双方が譲歩するのであり、これを、たとえば土地の訴訟の場合、相論の土地の権利の一部を相手方に贈与するものと解したことによるものと思われる。
[石井良助]
一般的には自由意志による贈与,それも子孫以外の血縁関係のない者に対する贈与を意味し,これをとくに他人(たにん)和与と称した。また和解の意味にも用いられ,とくに鎌倉幕府では,地頭などの荘園侵略に起因して和与が行われるようになり,後期には盛行した。その方法には,地頭請(うけ)や下地中分(したじちゅうぶん)などがあった。訴訟の途中で和解が成立すると和与状が作成され,幕府はこれを保証する下知状を発給した。これがない私和与は,訴訟法上不利益をこうむった。
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…中世において和与,すなわち無償贈与や紛争和解にともなって作成された文書をいう。ただし前者の贈与(他人和与)にともなう和与状は避文(さりぶみ)との区別がつけがたく,きわめてまれで特殊な場合であり,普通,和与状というと後者を指す。…
※「和与」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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