裏封(読み)ウラフウ

デジタル大辞泉 「裏封」の意味・読み・例文・類語

うら‐ふう【裏封】

文書文面を公に保証するものとして裏に記す言葉署名。また、中世訴訟で、訴陳状の裏に記した、当事者および奉行花押かおう

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精選版 日本国語大辞典 「裏封」の意味・読み・例文・類語

うら‐ふう【裏封】

  1. 〘 名詞 〙 文書の裏面に証明のことばや署名がなされること。中世の訴訟で、原告訴人)の訴状被告(論人)の陳状に担当奉行が裏判を記して確認したことを示すこと。訴陳状の文章が長く数紙にわたるときは、その継ぎ目に裏判をした。また、和解した場合の和与状の裏に、奉行人が和解の条件を認知したことを示すために書判などをすることもいう。
    1. [初出の実例]「証文裏封事文明十年十二月十日任証判之旨重為後証裏文明十七十廿四判在之」(出典:室町家御内書案(14C後‐16C後)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「裏封」の意味・わかりやすい解説

裏封 (うらふう)

中世に表面の文書に記載された内容,その使用される機能などを,その時点現状のまま確定するために,文書裏面に書かれた文章と署名署判。たとえば訴人(原告)が幕府裁判所に訴状を提出すると,担当奉行人は訴状の裏,紙継目裏に署判し,論人(被告)に対しこの訴状が裁判所の部局を経過したものであることを明示する。また当事者の和解契約書である和与状の裏に,幕府奉行人が連署し,この和与が当事者の一方的改変を許さない公的な和与であることを確認する。このように裏封はある場合には表文書の機能や効力に法的な保証を与えるものであった。しかしたとえば裁判の過程で,一方が他方の提出した証文を謀書(偽造文書)であると申し立てた場合,担当奉行人はその証文の裏を封ずるが,この裏封は表文書が実書であることを認定したものでもなく,また逆に謀書と判定したものでもない。ただその文書に対し謀書申立ての事実があったことを確認し,以後表文書に変改が加えられたり,他の文書とすり替えられることを防止し,裁判の終結後,謀書人もしくは実書を謀書と申し立てた当事者に刑事罰を科するための必要な手続であった。一般に表文書の効力の全部もしくは一部を否定するために文書に加えられる作業を〈裏を破る〉〈裏を毀(こぼ)つ〉というが,これはその部分の表文書の効力が破られ毀れた裏面から逸出し,無価値となることを意味した。逆に〈裏を封ずる〉のは,表面文書の自由を束縛し,現状に固定することを意味する。したがって,ある場合には裏封がそのまま表文書効力の保証,確認ともなりうるが,一般には,まさにその時点におけるその文書の現状の固定だけを意味したのである。〈封ずる〉にせよ〈破る〉にせよ,このような文書への働きかけがその裏面を通じて行われていることは注目すべき現象であるといえよう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裏封」の意味・わかりやすい解説

裏封
うらふう

私的文書の裏に,権力者が文書の内容を証明する文言を書き花押 (かおう) を押すこと。鎌倉時代の訴訟における和与状などに多くみられる。

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