海洋の警戒を任務とする軍用機。第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけては敵水上艦艇の動きを捕捉(ほそく)するのが主体で、おもに飛行艇が使われていたが、その後は潜水艦を主対象とするようになり、陸上基地を使う多発大型機が主力となっている。それまでも対潜作戦の重要性が認識されていなかったわけではないが、潜航されるとみつける手段がなく、哨戒機は艦隊や船団の上空を飛んで、潜水艦が雷撃深度まで浮上したり、高速の洋上航行をするのを阻止する程度のことしかできなかったのである。それが探索技術の発達により、積極的に潜水艦を捜索・攻撃できるようになったわけで、潜水艦が核弾頭付き弾道ミサイルを搭載し、戦略的に大きな位置を占める現在では、哨戒機の重要性は増している。
哨戒機が装備する対潜用探索機器には、ソノブイ(水中投下式音波探知器)、磁気探知装置、レーダー、電波方位測定装置、赤外線探知装置などがあり、これらを駆使して位置を捕捉したら、魚雷、爆雷などで攻撃する。しかし、艦隊や船団周辺あるいは海峡のような限定された海域を捜索するのならばともかく、広い海洋のどこにいるかわからない敵潜水艦をみつけだすのはきわめてむずかしい。そこで偵察衛星、海中に設置した探知網、潜水艦攻撃用の潜水艦、対潜用水上艦艇および哨戒機が一体となって、常時敵潜水艦の所在海域を探り、いざというときに捜索範囲を絞れるような態勢がつくられている。なお、空母搭載用のものを一般に対潜機とよんでいたが、対潜ヘリコプターの能力向上などにより、艦上対潜機は姿を消した。
[藤田勝啓]
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