唐鞍(読み)カラクラ

デジタル大辞泉 「唐鞍」の意味・読み・例文・類語

から‐くら【唐×鞍】

《「からぐら」とも》飾り鞍の中でも朝儀の出行列のときに用いられた正式の馬具銀面ぎんめん頸総くびぶさ雲珠うず杏葉ぎょうようなどの飾りがあり、外国使節接待御禊ごけい供奉ぐぶ公卿賀茂使いなどが使用した。→大和やまと

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精選版 日本国語大辞典 「唐鞍」の意味・読み・例文・類語

から‐くら【唐鞍】

  1. 〘 名詞 〙 ( 唐風の鞍の意。「からぐら」とも ) 飾り鞍の一種。朝儀の出行列の正式の馬具。銀面(ぎんめん)、頸総(くびぶさ)雲珠(うず)、杏葉(ぎょうよう)などの飾りがあり、蕃客の接待、御禊(ごけい)供奉(ぐぶ)の公卿、賀茂の使いなどが使用した。⇔大和鞍(やまとぐら)
    1. 唐鞍
      唐鞍
    2. [初出の実例]「蕃客乗騎、唐鞍寮家掌収」(出典:延喜式(927)四八)
    3. 「予て認得(みおぼえ)ある、為義朝臣の秘蔵し給へりし、唐鞍(カラクラ)を置たれば」(出典読本椿説弓張月(1807‐11)前)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐鞍」の意味・わかりやすい解説

唐鞍
からくら

飾り馬につけた鞍。平安時代に盛んに用いられた。唐風の飾りを施し、もっぱら外国の賓客や、大嘗会(だいじょうえ)・御禊(ごけい)・行幸(ぎょうこう)等に参加する公卿(くぎょう)が乗用した。このほか、とくに賀茂祭(かもまつり)、春日祭(かすがまつり)の勅使や、一部の大社では、祭礼の威儀馬としても使用された。しかし、しだいに本式の唐鞍は調達が困難になり、簡略化したものが多くなった。

 唐鞍は鞍橋(くらぼね)の構造そのものが倭鞍(やまとぐら)と異なり、幅広い居木(いぎ)に前輪(まえわ)・後輪(しずわ)を乗せた形の緊縛法を用いる。また、馬体にすきまがないほどに飾りたてる装具が特徴。遺品としては、中世のものが数点伝わっているが、奈良市の手向山(たむけやま)神社の一具(国宝)は、大滑裏(おおなめうら)に嘉元(かげん)4年(1306)修理の記録が残っており、もっとも古様で装具も完備している。これによると、唐鞍のみに用いる荘厳具(しょうごんぐ)として、馬の顔につける銀面、頭に立てる角袋(つのぶくろ)、首から垂らす天蓋(てんがい)形の頸房(くびふさ)、背に立てる雲珠(うず)、鞍橋の後部で左右に垂らす八子(はね)、赤革の三繋(さんがい)(面繋(おもがい)、胸繋、鞦(しりがい))に取り付ける多数の摂蝶(せっちょう)と杏葉(ぎょうよう)、唐尾に結んだ尻尾を飾る尾袋などがある。

 また、金銅製の大滑、唐鞍轡(からくらくつわ)、輪鐙(わあぶみ)、錦の鞍褥(くらしき)や表腹帯(うわはるび)、緂(だん)染めの手綱、差縄、鞍覆(くらおおい)なども、似たような装具は倭鞍にも用いるが、唐鞍は特有の様式を備える。

[宮崎隆旨]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐鞍」の意味・わかりやすい解説

唐鞍
からくら

馬具の一種。唐風を模した儀礼用の。馬頭に銀面,菖蒲形 (あやめがた) を掛け,尻繋 (しりがい) ,胸繋には杏葉 (ぎょうよう) を飾り,下鞍 (したぐら) ,泥障 (あおり) には華美な透かし金物をつける。鞍橋 (くらぼね) の後輪 (しずわ) の居木 (いぎ) 先には金属製か皮製の八子 (はね) という長帯を8~12条飾る。尾には尾袋を掛け,首には頸総 (くびぶさ) をつける。平安時代から外賓の乗用にあてられ,また大嘗会の御禊行幸に供奉する諸卿,賀茂祭に参向する使いなどが用いた。

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