唱門師(読み)ともじ

精選版 日本国語大辞典 「唱門師」の意味・読み・例文・類語

とも‐じ【唱門師】

〘名〙 中世賤民で、元日の朝、寅の刻(午前四時頃)に、宮中日華門に参って、毘沙門経の文句を訓読して祝儀をしたもの。しょうもんし。しょうもじ。
随筆一話一言(1779‐1820頃)一二「とんどうを焚くなり、〈略〉此のとき白赤鬼出で舞ふ、是れは土御門卑官なり、所謂唱門師(トモジ)なり」

しょも‐じ【唱門師】

〘名〙 「しょうもんし(唱門師)」の変化した語。〔かた言(1650)〕

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デジタル大辞泉 「唱門師」の意味・読み・例文・類語

しょうもん‐じ〔シヤウモン‐〕【唱門師】

中世、祈祷きとう卜占ぼくせんや祝福芸能を業とした下級陰陽師おんようじ室町時代には奈良興福寺に座が結成されたほか、京都など各地に存在し、曲舞くせまい猿楽などの芸能を行ったが、江戸時代には賤民せんみん化した。声聞師しょうもんじ。しょうもじ。しょもじ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唱門師」の意味・わかりやすい解説

唱門師
しょうもんし

唱聞師、声聞師、唱文師、聖文師とも書き、「しょうもんじ」「しょもじ」ともいう。中世から名が現れ、民衆門口に立って金鼓(きんこ)を打ち、経文寿詞を唱える芸能の一種で、施しを乞(こ)うた。大和(やまと)(奈良県)の興福寺に所属する唱門師はとくに知られ、清掃などで奉仕したが、一座を結成し、卜占(ぼくせん)、読経曲舞(くせまい)などを行い、猿楽(さるがく)などの芸能を支配する権利を得ていた。近世の京都では大黒(だいこく)ともよばれ、皇居の門で元旦(がんたん)に毘沙門(びしゃもん)経を訓読して玉体の安穏を祈った。中世から近世初期にかけて毎年正月に宮中に出入りして千秋万歳(せんずまんざい)を奏したのも唱門師たちであった。京都のほか、近江(おうみ)(滋賀県)や河内(かわち)(大阪府)など各地に存在し、近世の大道芸人の先駆をなした。

[関山和夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唱門師」の意味・わかりやすい解説

唱門師
しょうもんし

古代~中世に正月に参内し,毘沙門経を訓読したり,曲舞 (くせまい) をして祝儀をなした雑戸の民。声聞師,しょうもじともいう。中世には,祈祷,祓 (はらい) ,卜占などを業とする民間陰陽師として,門付けをし,また呪術的芸能をも伝承した。

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世界大百科事典(旧版)内の唱門師の言及

【声聞師】より

…〈しょうもんじ〉〈しょもじ〉とも。用字は文献によってまちまちで唱門師,唱聞師,聖問師,唱文師,誦文師などとも記される。声聞師の源流については律令制下の中務(なかつかさ)省陰陽寮に属していた陰陽師が没落して民間に流れたものに始まるともされているが,よくわかっていない。…

※「唱門師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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