改訂新版 世界大百科事典 「商品価格指数」の意味・わかりやすい解説
商品価格指数 (しょうひんかかくしすう)
commodity index
需給の変化を価格に敏感に織り込んで動く代表的な市況商品を群としてとらえ,その価格の推移を指数化したものである。商品の価格の動き,つまり商品相場にはその商品の需給動向を中心とする経済の変動だけでなく,政治,社会などのさまざまな事象が反映されるが,なんといっても需要の変化が大きく響く。経済活動が活発になれば需要が増え,需給が締まって値上がりする。逆に経済活動が停滞すると需要は冷え,値下がりする。商品の価格変動が有力な景気指標とされる理由である。たとえば綿糸相場は綿製品の需要を通じ,消費財の動向をつかむのに便利だし,小型棒鋼は基礎的な資材として生産財全般の動きを反映する例が多い。銅は電線,伸銅品などに加工され,世界的に広い需要のすそ野をもち,国際景気との連動性は高い。だが個々の商品をとると,ときに個別の特殊事情が働き景気全般とかけ離れた動きをみせることがある。銅の産出国で労使交渉のもつれからストライキ減産に入ったり,国際紛争に巻き込まれたりすれば供給が一時細り,需要が停滞していても価格が上がることがある。そこで代表的な市況商品を群としてとらえれば個々の商品の特殊要因が全体の中で消化され,景気指標としての有効性が高まるわけである。商品価格指数は構成する商品が景気の動向に敏感なものに絞られているため,景気判断の手がかりとなるほか,原材料を主体としているので,その動きは物価全般に先行する性格をもち,物価の風見鶏(先行指標)の役割をも果たす。また商品指数は日次が主体となっていて発表頻度が高く,一般の経済指数に比べ速報性が抜群である点で,景気の局面をよりすばやくとらえることができる利点をもつ。
日本で唯一の総合的な商品価格指数は日本経済新聞社が開発した日経主要商品価格指数(通称,日経商品指数)である。1974年11月,代表的な市況商品17で構成する〈日経主要商品価格指数・日次17種〉を完成,1970年にさかのぼって発表した。その後に完成する一連の商品指数の中核となるもので,75年7月には商品数を42に拡大した〈週次42種〉〈月次42種〉の総合指数と,42の商品を鋼材,非鉄,繊維,木材,化学,石油,紙・板紙,食品,その他の9商品群に分けた〈類別指数〉が完成,日経商品指数の体系ができ上がった。日経商品指数は景気指標として作成されたため,その採用品目は需給の変化をすばやく相場に織り込み,しかも国内での重要な工業原材料に絞られている。また採用品目中,非鉄金属,天然ゴム,アメリカ産大豆などの国際商品,それに綿糸,毛糸,砂糖など原料を輸入に仰いでいるため海外原料相場の影響を強く受ける準国際商品が含まれている結果,海外要因も反映し,国際商品価格指数の性格も併せもつ。採用している価格は,それぞれの商品の各取引段階のうち最も需給の変化に敏感な段階のものに限っているうえ,全国の指標とされている地域のものを選んでいるのが特徴である。日経商品指数の基準は1970年=100,計算方法は幾何平均法,ウェイトは付けていない。採用42品目の内訳は繊維7品目,鋼材7品目,非鉄6品目,木材4品目,化学6品目,石油3品目,紙・板紙3品目,食品3品目,その他3品目である。
国内の市況商品の相場が景気の有力な指標であると同様に,国際的な市況商品(国際商品)の相場は世界景気と密接な関係にある。代表的な国際商品を選んで指数化したのが〈国際商品相場指数〉である。イギリスのロイター通信社が作成しているロイター商品相場指数のほか,イギリスの経済紙《フィナンシャル・タイムズ》,アメリカのダウ・ジョーンズ社などが日次の指数を作成,発表している。ロイター商品相場指数Reuter’s U.K.Commodity Indexはロイターの通信網で世界的に伝達されるうえ,歴史も古く,広く世界で利用されている。基準時は1931年9月18日で計算方法は加重平均である。採用品目とウェイト(かっこ内)は次のとおりである。小麦(14),綿花(13),コーヒー豆(11),羊毛(11),銅(9),砂糖(7),ゴム(7),トウモロコシ(5),米(4),牛肉(4),大豆(3),カカオ豆(3),スズ(2),落花生(2),コプラ(2),亜鉛(2),鉛(1)。
執筆者:米良 周
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報