百科事典マイペディア 「大新聞・小新聞」の意味・わかりやすい解説
大新聞・小新聞【おおしんぶん・こしんぶん】
→関連項目絵入自由新聞|国民新聞|めさまし新聞
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明治前期における新聞の二大類型。1874年ごろから明確になる。大新聞は紙型が現代の新聞のブランケット判に近いのに対し,小新聞はその半分のタブロイド判であるため,こう呼ばれた。しかし,内容や読者層においても両者の特徴は対照的であった。大新聞が漢文口調の論説中心であるのに対し,小新聞には論説がなく,社会面が目だっていた。また大新聞にはない傍訓,挿画が,小新聞にはふんだんに使われていた。さらに大新聞の記者が旧幕臣を中心とした士族出身であるのに対し,小新聞の記者は戯作者を中心とした庶民出身であった。読者層でも両者の識別は鮮明で,〈日々新聞ノ如キ紙幅大ニシテ,且ツ勿論其議論高尚ナルヲ以テ,中等以上ノ人民之レヲ読ミ,又夫ノ仮名付小新聞ノ如キハ,平均セバ下等社会ノ読ム所ナルベケレ〉(《東京日日新聞》1878年2月13日)といわれるように,大新聞は中・上流社会に,小新聞は下流社会に,主として読まれていた。
大新聞は政論新聞ともいわれた。大新聞の興隆期が自由民権期であったため,大新聞には政治論議を中心とした社説,コラム,投書が目だっていた。その政治論議は早期国会開設を要求する民権派と漸進的な開設を主張する官権派(御用新聞)とによって,かまびすしく展開された。民権派新聞には《郵便報知新聞》《朝野新聞》《東京横浜毎日新聞》《東京曙新聞》があり,官権派新聞には《東京日日新聞》があった。一方,小新聞は花柳だね,警察だねなどで特色を発揮していた。小新聞の世界では大新聞ほどはっきりした政党色はなかったが,自由民権運動が高揚するとともにその色彩が多少とも現れる。《読売新聞》《仮名読新聞》《東京絵入新聞》《絵入自由新聞》などが主要な小新聞である。なお,大阪では大新聞として《大阪日報》,小新聞として《浪花新聞》《朝日新聞》が代表格である。東京,大阪以外では,大新聞・小新聞という分け方による新聞の類型化は困難であった。
購読料は1ヵ月前金で,大新聞は50~70銭,小新聞は20銭くらい。また当時の民衆の読み書き能力は低かったため,大新聞の内容を理解することはむずかしかった。さらに〈大新聞の雑報より小新聞の雑報は行届きたるもの多し。其わけといへば,大新聞の記者は論説を第一として雑報を次とし,小新聞は専ら雑報の正確を要せんと心かくる故なり〉(《読売新聞》1878年10月23日の投書)といわれるように,小新聞は報道内容の充実に努力した。こうして小新聞の発行部数は大新聞を上回り,1880年前後には東京では《読売新聞》,大阪では《朝日新聞》が部数でトップにでた。そして自由民権運動の衰退とともに,政治色の強い大新聞は読者から見放されたため,85年ころから報道重視,平易な文章といった小新聞色をとり入れ始める。一方,小新聞は,それ以前から平易な論説や政治報道といった大新聞色をとり入れながら成長しており,大新聞,小新聞が接近した〈中新聞〉が大都市の新聞界で台頭する。政治状況の安定化,庶民への教育の普及や所得の上昇,平準化も中新聞の読者層拡大を促進した。日本でも明治前期には欧米型の高級紙(クオリティ・ペーパー),大衆紙の類型化が可能だったわけである。
執筆者:山本 武利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
明治初期のころ、海外知識、政治論をおもな内容とする新聞に対して、婦女子、芸人などを読者とする娯楽新聞が現れた。この種の新聞は、前者に比べて形が約半分の小形であったため、小新聞とよばれ、それに対して従来の「普通新聞」を大新聞とよんだ。代表的な小新聞に1874、75年(明治7、8)ごろ創刊の『読売新聞』『平仮名絵入新聞』『仮名読新聞』、大阪の『浪花(なにわ)新聞』などがある。大新聞と違って文体は口語体を用い、総振り仮名付き、論説はなく、花柳界(かりゅうかい)、警察ダネ、演芸、角力(すもう)など社会雑報をおもな内容とした。記者も、大新聞は洋学者、漢学者、政治論者が多かったのに対し、小新聞は国学者、戯作者(げさくしゃ)、狂歌師などで、街頭で読み売り販売するのが普通だった。明治10年代なかば自由民権運動が高まるにつれ、小新聞も政治論を掲げるようになり、逆に大新聞は文章を平易にし、小説、社会雑報を重視するようになった。このため両者の差はしだいに薄れていった。
[春原昭彦]
…したがって,一方の政談演説に対し,政論新聞が成立した。それは,新聞自体の種別でいえば,論説を掲げない社会面中心の小(こ)新聞に対する,大(おお)新聞であった(大新聞・小新聞)。このように政論は政論新聞の論説を発生源もしくは媒体とし,各地で開かれる政談演説会の助けをかりて普及する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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