圏構造(読み)けんこうぞう

改訂新版 世界大百科事典 「圏構造」の意味・わかりやすい解説

圏構造 (けんこうぞう)

圏または圏域とは地理学学術用語として用いられる地域とほぼ同じ意味で,全体として一体性をもつ空間をいう。その一体性は,圏域の構成部分がなんらかの共通性をもつか,またはなんらかの中心に対して相互に結び合わさっているかによる。例えばイスラムを主として信じている国をまとめてイスラム圏という場合は前者の例であり,東京を中心として結びあっている範囲を首都圏と呼ぶのは後者の例である。

 圏のまとまりが,どのような構造になっているかに着目して圏構造の言葉が使われるが,それは,とくに一つの中心によって結び合っている場合にいわれることが多い。すなわち,中心を取り巻く地域(圏)において,中心からの距離が増加するに伴い,中心からの影響が変わってゆき,中心を取り巻いて同心円状の地域に区分されることをいう。

 ドイツ人のチューネンが,1826年に発表した《孤立国》の中の中心の都市を取り巻く地域の土地利用の違いは,この例としてよく知られる。チューネンのモデルをさらに広く解釈して,居住酪農近郊農業),小麦放牧,未利用地と展開することも考えられる。

 アメリカ人の都市社会学者E.W.バージェスが1925年,シカゴを調査地域にとり,都市の地域構造の理論として同心円構造論を発表した。これは,都市域で中心部すなわち都心(バージェスは中心業務地区Central Business District(CBD)と呼ぶ)を取り巻いて漸移地帯,労働者住宅地帯,中・上流住宅地帯,通勤者地帯と同心円状に分布するという圏構造をみせている。シカゴのような大都市では都市および都市圏を動かす行政経済,文化などの中枢的機能の集中した都心が形成される。この地域は交通が集中し,情報が求めやすいなど多くの長所をもつために地価は高く,高層化が目だっている。一方,住宅,工場,学校など安くて広い土地を求めるような施設は,中心部から遠心(離心)的移動をして,周辺に住宅地区や工場地区を形成する。この二つの地域の間には,中小規模の住宅,商店,工場の混在する漸移地帯(混合または混在地帯ともいう)が存在する。このように大都市では,都心,漸移地帯,住宅(および工場)地域と,圏構造を示している。

 また,国家全域をみた場合,経済発展段階において地域差があり,圏構造がみられる。例えば日本の場合,首都東京を中心として,太平洋ベルト地帯は最も経済が進み人口も集中している。そして農・工業のかなり進んだ整備地帯がこの地帯を取り巻き,縁辺地域は開発地域として位置づけられ,農・畜産資源に富む自然豊かな地域となっている。
商圏 →都市圏
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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