土着の人民のことであるが,日本古代律令制下においては,〈土人浪人を論ぜず〉というように,戸籍計帳によって当土に編戸された公民を指し,浮浪人と区別されていた。律令制解体によって籍帳支配が消滅すると,土民は荘園公領村落に居住する荘公民一般の名称となり,文書の中で〈土民の愚,朝章を忘る〉〈野心ある土民〉〈田舎の土民,ひそかに官地を犯作す〉〈土民として相論をなす〉など,しばしば荘公支配と対立する反権力的住民をあらわす用語として登場する。このような中世土民の動向は,室町時代の土(つち)一揆で頂点に達した。1428年(正長1)の土一揆を記した《大乗院日記目録》は,〈天下の土民蜂起す。徳政と号し,酒屋,土倉,寺院等を破却せしめ,(略)借銭等悉くこれを破る〉として,〈凡そ亡国の基,これに過ぐべからず。日本開白以来,土民蜂起是れ始めなり〉と述べている。
執筆者:戸田 芳実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…そのため土一揆は馬借が先頭に立ってリードしたという理解が一般的である。しかし史料に出てくる〈馬借〉の語は,〈土民〉さらには〈土民蜂起〉とほとんど同義に使われている場合が多い。土一揆における馬借の参加の事実の重さゆえにこのような用語法が生まれたことは否めないが,史料上の表現にそのまま依拠して馬借の活躍を過大評価することは慎まなければならない。…
※「土民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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