在日米軍(読み)ザイニチベイグン(英語表記)United States Forces Japan

デジタル大辞泉 「在日米軍」の意味・読み・例文・類語

ざいにち‐べいぐん【在日米軍】

日米安全保障条約に基づき、日本国内に駐留するアメリカ軍。約3万5000人を擁し、海兵隊空軍兵員が多くを占める。東京都西部の横田基地司令部を置く。
[補説]在日米軍の将兵らは、基本的に日本の法律が適用されない身分で、法的地位などは日米地位協定によって協議される。

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共同通信ニュース用語解説 「在日米軍」の解説

在日米軍

日米安全保障条約に基づき日本に駐留する米軍。冷戦時代に旧ソ連の侵攻を防ぐ役割を果たしたとされる。日本政府は海洋進出を図る中国や、核兵器開発を進める北朝鮮に対する抑止力効果の発揮に期待を寄せる。2015年6月現在、陸海空軍と海兵隊で計約4万9千人。司令部は横田基地(東京都福生市など)に置く。沖縄県に米軍専用施設・区域の約74%が集中する。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設計画は地元の反対で進んでいない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「在日米軍」の意味・わかりやすい解説

在日米軍
ざいにちべいぐん
United States Forces Japan

日本に駐留するアメリカ合衆国軍隊のこと。日米安全保障条約(1960年〈昭和35〉締結)第6条に基づき「日本国において施設及び区域を使用する」権利を有し、その地位は「日米地位協定」(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」)によって規律される。「在日米軍」というのは軍事的にはきわめてあいまいな概念であり、その定員、規模、軍種が特定されているいわゆる「部隊」として存在しているものではない。「在日米軍」というのは、日本の施政権下の領域にいる限りの米軍のことであり、米軍のある部隊が日本の施政権下の領域に入れば、それは「在日米軍」となり、また、その領域から離れれば「在日米軍」ではなくなるという便宜的なものである。在日米軍司令部(横田基地・東京都)が存在するが、それは主として軍政的な機構であって、「在日米軍」の全部隊に対する作戦指揮権はもっていない。さまざまな米軍の諸部隊が、それぞれ指揮権をもつ上部の司令部の作戦指揮系統下にあって、それぞれの任務遂行のために日本に駐留しているというのが「在日米軍」の実体である。

 在日米軍の兵力規模とその部隊の構成は、(1)米国のその時々の軍事戦略の変化とそれに基づく戦力の前進配置の変更、(2)米軍の戦力を補完する日本の自衛隊の戦力の増強と、それに伴う軍事責任分担の拡大、などの要因によって変化してきたし、また、今後も変化する。

 在日米軍の任務は、単に「日本の防衛」のみならず、さらに広くアジア・太平洋戦域および中東・インド洋戦域における米国の権益擁護にあり、究極的には米国本土防衛のための「西の防衛線」(ジョーンズ米統合参謀本部議長)確保にある。事実、過去において在日米軍は三度にわたる戦争(朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争)に出動し、現在では軍事演習に際し、北はオホーツク海、日本海から朝鮮半島、東シナ海、タイ、フィリピン、そして南はオーストラリア、インド洋、中東に至るまで在日米軍の部隊を展開している。

 在日米軍司令官は米第5空軍司令官(空軍中将)が兼務し、平時には在日米陸軍司令官(司令部はキャンプ座間(ざま)・神奈川県)および在日米海軍司令官(司令部は米海軍横須賀(よこすか)基地・神奈川県)に対する調整権をもっているだけである。また在日米軍司令官は、日本における米国の軍事代表として、防衛省および他省庁との折衝を行うとともに、外務省との間で日米地位協定の実施について調整を行う責任をもっている。なお、在日米軍司令官は、「日本有事」の場合、在日米軍の部隊に対する指揮権をもつとされている。

 在日米軍の諸部隊の主力は、ハワイに司令部を置く米太平洋統合軍(PACOM)の指揮下の部隊である。

 空軍は、太平洋空軍司令官(司令部はハワイ)指揮下の第5空軍司令部を横田基地に置き、そのもとに実戦部隊として第18航空団(嘉手納(かでな)基地・沖縄県)と第35戦闘航空団(三沢(みさわ)基地・青森県)、そして、第374空輸航空団(横田基地・東京都)を配置している。また、第82偵察飛行隊(E-3A空中指揮機)も嘉手納基地に配備している。

 海軍は、横須賀軍港と佐世保(させぼ)軍港(長崎県)、那覇(なは)軍港(沖縄県)、ホワイト・ビーチ(同前)をもち、米第7艦隊の支援任務をもつ部隊を配備している。また、米第7艦隊の旗艦ブルーリッジ、空母インディペンデンス、第15駆逐戦隊艦艇の母港として横須賀を、海兵隊の強襲揚陸艦の母港として佐世保を使用している。これら第7艦隊の兵員は在日米海軍の兵員数のなかには含まれていない。さらに、嘉手納基地と三沢基地に配備したP-3C対潜哨戒(しょうかい)機部隊を指揮する第7艦隊哨戒・偵察部隊/第1哨戒航空団司令部を上瀬谷(かみせや)基地(神奈川県)に置いている。

 海兵隊は、第3海兵機動展開部隊司令部(キャンプ・コートニー、沖縄県)指揮下に、第3海兵師団(司令部は同前。歩兵2個連隊と砲兵1個連隊)と第1海兵航空団(司令部はキャンプ瑞慶覧、沖縄県)を置いている。同航空団の戦闘機・攻撃機部隊は岩国基地(山口県)、ヘリコプター部隊は普天間(ふてんま)基地(沖縄県)に配備している。

 陸軍は日本に実戦部隊を配備しておらず、第9戦域陸軍地域コマンドをキャンプ・座間に置いている。

 太平洋統合軍以外の部隊として、嘉手納に第353特殊作戦軍(空軍)、横田に機動空軍の部隊、トリイステーション(沖縄県)に陸軍特殊作戦部隊(グリーン・ベレー)、三沢、楚辺(そべ)(沖縄県)の両基地に情報収集部隊を配置している。

[松尾高志]

『防衛庁編『防衛白書』各年版(財務省印刷局)』『朝雲新聞社編『防衛ハンドブック』各年版(朝雲新聞社)』『梅林宏道著『在日米軍』(岩波新書)』


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