地誌学(読み)ちしがく(その他表記)regional geography
Länderkunde[ドイツ]

精選版 日本国語大辞典 「地誌学」の意味・読み・例文・類語

ちし‐がく【地誌学】

  1. 〘 名詞 〙 地理学の一分野。ある地域自然および人文地理的現象を検討して地域的特色を明らかにすることを目的とする。地誌

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改訂新版 世界大百科事典 「地誌学」の意味・わかりやすい解説

地誌学 (ちしがく)
regional geography
Länderkunde[ドイツ]

一般地理学(または系統地理学)と並ぶ地理学の一部門である。一般地理学が,地形気候などのようなある種の現象を対象として,普遍的法則の定立を目標とするのに対して,地誌学(または特殊地理学)は,地域を対象とする。A.ヘットナーや,その流れをくむR.ハーツホーンは,ある領域にある地理的諸事象の因果的な相互関係こそ,地域に個性を与える本質とみなし,これを追求する地誌学を地理学の核心としたが,1950年代以降,特殊性を強調する地誌学は個性記述的であって,説明的な実証科学にはなり得ないという強い批判が相次いだ。しかしながら,近代地理学の中で地誌学の歴史を振り返ってみると,科学的な地誌学の確立に向かって努力が払われてきていることがわかる。その一つの焦点は,対象とする〈地域〉をどう把握するかにあったといってよい。C.リッターは,地表の部分を個体として取り出し,大きな部分がより小さな部分の複合体として成り立つという土地のシステムの概念をたてた。F.vonリヒトホーフェンは,この地域体系と,各地域は構成諸要素の集合体であることの二つを前提として,発生学的・因果的にとらえるコロロギーChorologieの考察様式の重要性を強調した。地域は,それを構成する自然・人文の諸要素をそれぞれ分析することによって明らかにすることもできるが,P.ビダル・ド・ラ・ブラーシュとその門弟たちは,生活様式を通して,自然と人文の統一された地域を巧みに描き出した。O.シュリューターによって確立された景観の概念も,地域の概念に通じるものである。地域のとらえ方は,構成要素や景観の等質性を重視するものから,地域間の共時的な機能関係に力点を置く方法や,通時的な視点から動態的にとらえる方法へと展開した。さらに地誌学は,その地域の住民の価値判断に基づく行動を通して理解する,人間の科学の一つだとする主張などもある。
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百科事典マイペディア 「地誌学」の意味・わかりやすい解説

地誌学【ちしがく】

系統地理学と並ぶ地理学の一部門。ある〈地域〉の地理的事情を分類,研究,記述する学問。記述されたものは地誌と呼ばれ,郷土誌,地方誌,各国誌などいろいろの類がある。古くは風俗,習慣,神話,伝説に至るまで無差別に記入されていたが,近代的地理学のなかでは,地理学通論に対して各地の記述を行う部門として位置づけられている。

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世界大百科事典(旧版)内の地誌学の言及

【地理学】より

…地誌学は,対象地域の選び方によって,制度的に設定された政治・行政区域に即して記述する行政地域誌,国土誌学または邦域誌学Landeskunde(ドイツ語。複数の国々についてはLänderkunde),形態・構造的にまとまった実質的な地域に即した景域地理学Landschaftsgeographie(ドイツ語),あるいは地方誌chorography,山岳誌orography,海洋誌oceanographyなどが成り立つ。 地域地理学には分業上次の研究分野が区別される。…

【地理学】より


[系統地理学と地域地理学]
 このように地理学の対象は複雑かつ多方面にわたるから,研究上の分業が不可欠であり,現に多くの部門が発達している。ふつう地理学は,系統地理学systematic geographyまたは一般地理学general geographyと,地域地理学regional geographyまたは地誌学,特殊地理学specific geographyとに大別される。 系統地理学は,自然地理学と人文地理学とに分けられる。…

【地理学】より


[系統地理学と地域地理学]
 このように地理学の対象は複雑かつ多方面にわたるから,研究上の分業が不可欠であり,現に多くの部門が発達している。ふつう地理学は,系統地理学systematic geographyまたは一般地理学general geographyと,地域地理学regional geographyまたは地誌学,特殊地理学specific geographyとに大別される。 系統地理学は,自然地理学と人文地理学とに分けられる。…

※「地誌学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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