地質温度計(読み)ちしつおんどけい(その他表記)geothermometer

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地質温度計」の意味・わかりやすい解説

地質温度計
ちしつおんどけい
geothermometer

ある特定の種類の岩石鉱物結晶構造化学組成 (同位体組成) が,それらのつくられるときの温度によって変化することを利用して,それらの岩石や鉱物の生成温度を推定することができる。このような役に立ちうる岩石や鉱物を地質温度計という。一般にこの特性は生成圧力によっても変化するので,温度の推定を正しく行うには,同時に圧力の推定も行う必要がある場合が多い。圧力の推定に使われるものは地質圧力計と呼ばれる。地質温度計としては次のような特性が使われている。 (1) 鉱物が相転移を起す温度による,(2) 固溶体鉱物の組成が温度によって変化することによる,(3) 鉱物中の流体包有物の存在が温度によって変化することによる,(4) 鉱物中の同位元素存在比が温度によって変化することによる。 (2) の方法として輝石中の鉱物組成を使う輝石温度計,(4) の方法としては 16O と 18O の存在比の違いを使う酸素同位体温度計などがよく使われるものである。 (3) の方法もきわめて広く用いられている。地質温度計は地球の内部の温度を知る直接の手掛りを与えてくれるので地球科学上重要な手段である。現在でもより正確な地質温度計を捜す努力が続けられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地質温度計」の意味・わかりやすい解説

地質温度計
ちしつおんどけい

岩石あるいは鉱物ができたときの温度を推定する手掛りになるものを地質温度計という。普通に使われている温度計のような目盛りのついた計器があるわけではない。岩石や鉱物ができたときの温度は直接計ることはできないため、鉱物の化学組成や結晶構造、鉱物組合せなどから生成温度を間接的に推定する。実際に地質温度計として使われるのは、(1)鉱物の融点や転移点、(2)2種以上の鉱物の共融点化学平衡の温度、(3)固溶体をつくる鉱物の端成分の溶解度と温度との関係、(4)包有物の化学組成と充填(じゅうてん)温度との関係、(5)同位体組成と温度との関係、(6)半導体鉱物の熱起電力などの物性と温度との関係、などである。岩石の生成当時の圧力を推定する手掛りになるものを地質圧力計という。

[千葉とき子]

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百科事典マイペディア 「地質温度計」の意味・わかりやすい解説

地質温度計【ちしつおんどけい】

地質現象の生起した温度を数値的に示すために利用される各種の現象や関係。推定する方法には,多形鉱物の相転移,固溶体鉱物の化学組成,平衡2鉱物間の特定イオンの分配平衡,鉱物中の流体包有物,酸素の同位体比などがある。たとえばAl2SiO5の多形(紅柱石・ケイ線石・ラン晶石)は温度・圧力以外の物理条件に支配されることが少ないので,地質温度計や地質圧力計として重要。
→関連項目多形

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岩石学辞典 「地質温度計」の解説

地質温度計

鉱物または鉱物の集合で,形成温度の推論に用いることができるもの.このためには様々な鉱物,同素体(allotrope),固溶体,共融,他の鉱物組合わせなどに対して,岩石や鉱物の熔融点造岩鉱物同質異像への変態が起こる転移点または遷移点,異なった条件下での平衡条件と安定範囲,などに関する熱的なデータを基礎にしている[Wright & Larsen : 1909, Ingerson : 1955].

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