塩化ベンゾイル(読み)えんかべんぞいる(その他表記)benzoyl chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ベンゾイル」の意味・わかりやすい解説

塩化ベンゾイル
えんかべんぞいる
benzoyl chloride

カルボン酸塩化物の一つ。刺激臭のある無色液体

 安息香酸塩化チオニルとの反応、または(トリクロロメチル)ベンゼン(α,α,α-トリクロロトルエン)の部分加水分解反応により合成する。水と徐々に反応して安息香酸と塩化水素になる。種々の有機化合物にベンゾイル基C6H5CO-を導入するベンゾイル化剤として、またアントラキノン系染料中間体原料として用いられる。催涙性があり、皮膚、目、粘膜を刺激する。

[谷利陸平]


塩化ベンゾイル(データノート)
えんかべんぞいるでーたのーと

塩化ベンゾイル

 分子式 C7H5ClO
 分子量 140.6
 融点  -0.5℃
 沸点  196.8℃/745mmHg
 比重  1.2113(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.5508

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改訂新版 世界大百科事典 「塩化ベンゾイル」の意味・わかりやすい解説

塩化ベンゾイル (えんかベンゾイル)
benzoyl chloride


もっとも簡単な芳香族酸ハロゲン化物の一つ。刺激性のある無色の液体で,湿気の多い空気中で白煙を生じる。沸点197.2℃,融点-0.5℃。水と反応し,安息香酸C6H5COOHと塩化水素を生じる。クロロホルムやベンゼンには反応せず溶けるが,メチルアルコールエチルアルコールとは反応し,安息香酸メチルエステルや安息香酸エチルエステルと塩化水素を生じる。製法は,安息香酸と五塩化リンまたは塩化チオニルSOCl2との反応による。有機合成反応において,手軽で優れたベンゾイル化剤として利用され,アルコールのベンゾイル化では安息香酸のエステルが,また第一および第二アミンのベンゾイル化では相当する安息香酸アミド類がえられる。医薬品,染料中間体の製造過程でこれらの反応が利用される。
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化学辞典 第2版 「塩化ベンゾイル」の解説

塩化ベンゾイル
エンカベンゾイル
benzoyl chloride

C7H5ClO(140.57).C6H5COCl.安息香酸に五塩化リンまたは塩化チオニルを反応させると得られる酸塩化物.刺激臭の強い無色の液体.融点-1 ℃,沸点198 ℃.1.219.1.5537.容易に加水分解して安息香酸に戻る.アルコール,フェノール,アミンなどと反応してベンゾイル誘導体をつくるので,ベンゾイル化剤として用いられる.[CAS 98-88-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化ベンゾイル」の意味・わかりやすい解説

塩化ベンゾイル
えんかベンゾイル
benzoyl chloride

化学式 C6H5・COCl 。刺激臭のある無色の液体で,沸点 197℃。ベンゾトリクロリドの部分加水分解,あるいは安息香酸と五塩化リンまたはホスゲンとから合成される。ベンゾイル化試薬,過酸化ベンゾイルの原料として用いられるほか,いろいろな染料,薬品の合成原料,特にアントラキノン系建染め染料の合成中間体として重要である。

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