塩水選(読み)エンスイセン

デジタル大辞泉 「塩水選」の意味・読み・例文・類語

えんすい‐せん【塩水選】

稲・麦・豆などの種子選別方法の一。塩水に入れて沈む、よく実って重い種子だけを選び、種まきに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「塩水選」の意味・読み・例文・類語

えんすい‐せん【塩水選】

  1. 〘 名詞 〙 稲、麦などで、もみがらをかぶった種子の良否選別方法の一つ。塩水の中に種子を入れ、浮かんだのは取り去り、沈んだ実入りのよいものを種籾(たねもみ)にする。
    1. [初出の実例]「種籾をおろす前の塩水撰(エンスヰセン)を、あの『愛国』だけ〈略〉えらい厳重にやったがと」(出典稲熱病(1939)〈岩倉政治〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「塩水選」の意味・わかりやすい解説

塩水選 (えんすいせん)

農作物の種子を一定の比重食塩水に浸し,液中での浮沈によって,しいな(粃),稔実不良種子を除き,稔実の良い種子を得る作業。比重が大きく,稔実の良い種子が播種後も出芽が良く,初期生育も旺盛で,多収となるため,種子の準備の際種子消毒などと併せて行われる。食塩水のほか,硫安,塩化カリなどの水溶性の高い肥料,にがり水も用いられる。稲作では古くから唐箕(とうみ)選(風選),水選が行われていたが,1898年に近代農学の祖,横井時敬(ときよし)が塩水選の効用を科学的に立証し,普及,奨励につとめたため,今日では稲作だけでなく,麦作などでも広く実行されている。塩水選の普及が明治時代の近代的農業技術の普及の契機であったといわれている。塩水選の際の液の比重は作物の種類や種子の形状(芒(のぎ)の有無など)によって異なるが,一般には,水稲うるち,オオムギで1.13ぐらい,陸稲,水稲もちで1.05~1.10ぐらい,コムギで1.22ぐらいが適当である。また,アワ,スイカ,キュウリ,ナス,ネギなど小粒で軽い種子では,塩水を用いず真水によって選別を行うとよい。この方法は,比重と種子の充実が比例する場合に効果があるが,そうでない場合,たとえばダイズやラッカセイなど脂肪を含むものには効果がない。
選種
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩水選」の意味・わかりやすい解説

塩水選
えんすいせん

よい種子を選ぶための比重選の一つ。種子の外殻に対する中身の充実の程度を、食塩や硫酸アンモニウムの一定比重溶液につけてその浮沈によって選別するもので、種子の真の比重による選別とは異なる。とくにイネの種もみを選ぶ場合に広く行われている。よく実った重いもみほど胚(はい)が大きく、胚乳養分量も多い。このようなもみは発芽の勢いが強く、初期の生育が優れているため、種もみとするのに好ましい。塩水選に用いる溶液の比重は、作物の種類によって異なる。うるち稲には比重1.13(水1リットルに食塩約250グラム)、もち稲や芒(のぎ)のあるうるち稲、陸稲などには比重1.08~1.10(水1リットルに食塩約170~180グラム)の塩水を用いる。種子の約2倍量の塩水に浸し、かき混ぜて、浮いた種子は捨て、沈んだ種子を用いる。塩水選後は種子をよく水洗いする。イネのほかコムギ、オオムギその他の作物でも塩水選が行われる。

[星川清親]

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世界大百科事典(旧版)内の塩水選の言及

【選種】より

…(2)篩(し)選 ふるいを用いて,種子より大きい夾雑物または種子より小さい砂粒などを除く方法である。(3)塩水選 充実のよい種子と悪い種子を一定濃度の食塩水中に入れて,沈むもの(充実良)と浮くもの(充実不良)に分ける方法である。溶かす食塩の量によって食塩水の比重を変えることができる。…

※「塩水選」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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