改訂新版 世界大百科事典 「選種」の意味・わかりやすい解説
選種 (せんしゅ)
seed selection
種まき前に不良な種子や夾雑(きようざつ)物を取り除き,健全で充実した種子だけを選び出す作業。種子の良否を評価する尺度はいろいろあるが,その種子を用いたときに発芽・苗立ちが良く,その後の生育が良好で,個体間のそろいも良く,多収の得られるものが良い種子とされる。出発点となる発芽については,種子の充実度,種子の齢(新旧),休眠の程度,病虫害の有無などの要因が関連する。種子は通例,前年産の新しいものの発芽率が高く,年数を経るに従って発芽力を失うが,低温・低水分の条件下で貯蔵することによって寿命を伸ばすことができる。栽培した個体間のそろいの良否には,種子の純度が関連する。このためには遺伝的に均質で優良なものを確保することが必要で,採種上あるいは種子操作上,異質個体の混入を避けることが必要となる。このような配慮を加えたうえ,選種の段階では,種子の大きさや重さ,色などにより,以下のような方法で選別が行われる。(1)風選 風によって,夾雑物やしいな(粃)を除く方法である。自然の風や唐箕(とうみ)を利用して行う。通常の脱穀機の中にも同様な風選の装置が組み込まれているので,脱穀の際にも一定の選別が行われている。(2)篩(し)選 ふるいを用いて,種子より大きい夾雑物または種子より小さい砂粒などを除く方法である。(3)塩水選 充実のよい種子と悪い種子を一定濃度の食塩水中に入れて,沈むもの(充実良)と浮くもの(充実不良)に分ける方法である。溶かす食塩の量によって食塩水の比重を変えることができる。(4)肉眼選 上記の方法では選別の困難なものを,肉眼によって選別する方法である。不良種子や夾雑物を取り除くのに有効であるが,大量の種子を扱うのには効率が悪い。変色した種子の選別には,色彩選別機もあるが,費用と効果の関係からみれば,種子を消毒する方が早道である。
執筆者:浜村 邦夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報