改訂新版 世界大百科事典 「境界確定の訴え」の意味・わかりやすい解説
境界確定の訴え (きょうかいかくていのうったえ)
隣接する土地の境界をめぐって争いがある場合に,裁判所の判決で境界線を決めてもらう訴えをいう。訴訟慣習法上認められてきた特殊の訴えである。〈経界(けいかい)確定の訴え〉ともいう。
この訴訟の特徴は,(1)裁判所が境界を定めるにあたっては,当事者の主張する境界線には拘束されず,客観的に妥当と認められるところに線を引くことができること,(2)したがって,判決では必ずどこかに境界線を定めなければならず,〈請求棄却〉判決はありえないこと,(3)通常の所有権確認訴訟などでは,原告は所有権の範囲について立証責任を負担するが,境界確定訴訟では立証の困難にかんがみ,原告および被告のこの面での負担が緩和され,裁判所による証拠調べのウェートが高いこと,などに求められる。
境界確定訴訟で土地の境界線が定められると,両所有地をめぐる紛争も解決されるのがふつうである。もっとも,判例および通説によれば,この訴訟は公法上の地番と地番との境界を定める訴訟であるから,私的所有権の範囲とは直接的には無関係であり,したがって,法的には土地所有権の範囲が決まってくるわけではないと解されている。これによれば,相隣者間で境界について合意が成立しても,その合意どおりの境界線を定めることは許されないし,相手方当事者の自白は裁判所を拘束しないし,和解や請求の認諾の余地もないことになる。土地境界の公的性質を前面に押し出してその私的性質を顧慮しないこのような考え方に対しては,一部に根強い批判がある。
→相隣関係
執筆者:井上 治典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報