民事訴訟の類型の一つで,原告が,一定の法律上の原因を主張して,法律関係の変動を求める訴訟をいう。たとえば,身分関係の領域では,認知(民法787条,人事訴訟手続法27条),養子縁組の取消し(民法803~808条,人事訴訟手続法24条),離婚の訴え(民法770条,人事訴訟手続法1条)などがこれにあたり,会社訴訟の領域では,株主総会決議取消し(商法247~250条),会社の設立無効(136,428条),取締役の解任(257条3,4項)などの各訴えがこれにあたる。
一般に,私人間の法律関係は,訴訟外でも私人の自由な意思表示によって,変更させたり消滅させたりすることができるのが原則である。たとえば,売買契約に解除原因があれば,売主であれ,買主であれ,訴訟に持ち込むまでもなく,契約を解除して契約がなかったものとすることができる。しかし,さまざまな法律関係のなかには,とくにその変動(変更や消滅)をもたらすだけの原因があるかどうかを慎重な手続で争わせて審理し,その原因があると認める判決によってはじめて法律関係が生じることとして,法律関係の明確を期し,混乱を避けるくふうをしなければならない場合がある。そのために認められているのが形成訴訟(ないし〈形成の訴え〉)である。したがって,形成訴訟は,訴訟による認容判決がないかぎり,何ぴとも権利関係の変動を主張できないような類型の訴えであるともいうことができる。株主総会決議取消しの訴えに例をとれば,いかに決議に手続上の誤りがあることが明白であっても,その誤りを訴訟で主張して,決議を取り消す旨の判決が確定しないかぎり,法律上は何ぴとも決議の取消しを主張できないのである。〈形成の訴え〉については,そのほとんどが民法,商法,人事訴訟手続法などに,だれがだれに対していかなる原因を主張すべきかについて明文の規定が存するのも,そのためである。
原告の主張どおりに法律関係の変更を認める判決を形成判決という。形成判決のもつ,法律関係を変更する効力を形成力と呼ぶ。形成判決によって変更された法律関係の効果は,ひろく一般第三者にも及ぶ。形成判決には,形成力のほか,形成原因(または形成要件--たとえば,総会決議の招集手続に瑕疵(かし)があったことや,離婚原因が存すること)について,もはや争うことができないという効力(既判力)が生じる。形成力は法律関係を変更する効力に尽き,形成の効果をもはや争うことができないという効力を担保するものは,この既判力をおいてほかにない。当事者がこの既判力を受けるのは当然であるが,訴訟に関与していない第三者になぜ既判力が及び,形成原因がないにもかかわらず法律関係が変更されたことを主張してあらためて争う途が奪われるのかは,政策的考慮は別として理論上は正当化は困難である。そこで近時では,一定の切実な利害関係を有する第三者は,その者が訴訟に関与していなければ,自己との関係であらためてその法律関係を争えると解すべきだとする見解もみられる。
執筆者:井上 治典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…訴訟物が当事者間の法律関係に限られぬ確認訴訟では,訴訟物たる法律関係の存否不明により生じる自己の法律的地位の不安危険を確認判決をもって除去する利益(確認の利益)を有する者と,かかる事態を生ぜしめている者がこれである。形成訴訟では,正当な当事者は法定されているのが通常だが,とくに行政事件訴訟法9条のいう〈処分又は裁決の取消しを求める法律上の利益を有する者〉(取消訴訟の原告適格)につき,判例は,これは当該処分または裁決の根拠法令の保護する利益を有する者をさすと解している(〈訴えの利益〉の項目参照)。なお,特定の法律関係については,複数人が共同訴訟人となることが当事者適格の要件とされる(固有必要的共同訴訟)。…
※「形成訴訟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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