声帯結節
せいたいけっせつ
Vocal fold nodule
(のどの病気)
声帯に生じる炎症性の腫瘤(こぶ)で、通常は両側に発生します(図18)。まれに片側だけに発生することもあります。大人(成人型)だけでなく、子ども(小児型)にも発生します。
発声時の声帯粘膜の慢性的な機械的摩擦が原因と考えられており、声帯にできる一種の“ペンだこ”と考えると理解しやすいと思います。したがって、音声を日常的に酷使している職業、すなわち歌手、教師、保母、アナウンサーなどに好発します。“謡人結節”という別名もあります。子どもの場合は、よく声を使う活発な低学年の児童に好発します。やや男子に多い傾向があります。
ほとんどの場合、声がれ(嗄声)が主な症状です。のどの違和感や発声時の違和感などの症状のこともあります。声を使う頻度により、症状の軽快、増悪がみられる(たとえば、教師であれば夏休みに声がよくなるなど)こともあります。
間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で声帯を観察し、声帯結節を確認します。
まず、保存的治療を行います。消炎薬の投与やステロイドホルモンの吸入を中心にした薬物治療や、誤った発声法を矯正し、正しい発声法を習得させるために音声治療が行われます。これらの保存的治療の効果がない時や、早期に治したい場合は、結節の切除手術を行います。
手術は、一般的には入院のうえ、全身麻酔をかけて、喉頭顕微鏡下手術(ラリンゴマイクロサージェリー)として行われます。この手術のあとには、声帯の傷の安静のために1週間前後の沈黙期間を要します。
子どもの場合は、変声期が過ぎると自然に治ることが多いので、声がれが高度でなければ、経過観察だけを行います。子どもで手術を考慮する時は、声がれが高度で本の朗読や友達との意思疎通にも支障がある場合や、声がれによる劣等感により精神的影響がみられる場合などに限られます。
のどを酷使しないように注意します。それでも改善しなければ、耳鼻咽喉科を受診します。
塩谷 彰浩
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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せいたいけっせつようじんけっせつ【声帯結節(謡人結節) Vocal Fold Nodules】
[どんな病気か]
喉頭(こうとう)の中の声帯に生じる結節(ペンだこのようなもの)です。
声帯は2本あり、声を出すときはお互いに超高速度でこすれあいます。
そして、もっとも強くこすれあう声帯の中央部分に、たこができるのです。したがって、両側にできることが多く、こすれあう頻度の高い若い女性や学童期の男児に好発します。
また、おこりやすい職業もはっきりしていて、歌手、ナレーター、コンパニオン、ジャズダンスやエアロビクスのインストラクター、保育園の先生などによくみられます。
嗄声(させい)(しわがれ声)と声域の幅の減少などがおもな症状です。
声の乱暴な使いすぎが原因となります。しかも、その環境が長期間にわたって続いている場合に、多くみられます。
[検査と診断]
喉頭内視鏡検査で比較的簡単に診断がつきます。
各種ファイバースコープとビデオ装置を組み合わせ、声帯をテレビモニターに拡大して観察します。また、ストロボスコープといって、瞬時瞬時の発光光源を用いると、声帯振動をゆっくり見ることができ、微妙な声帯結節でもはっきりとわかります。
[治療]
声の衛生についての指導と音声治療で治療することも可能です(コラム「声の衛生についての指導」)。しかし、長時間を要するのと、日本には専門家が少ないこともあってむずかしい局面もあります。緊急で副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬を用いることもありますが、消炎剤や吸入療法はほとんど効果がありません。
鉗子(かんし)などで注意深く結節を切除する喉頭顕微鏡下手術が有効ですが、高度な専門的技術が必要です。
[予防]
声を多用する人の多少の声の変化はやむを得ないのですが、声に変調がみられた場合は、早期に耳鼻咽喉科(じびいんこうか)の診察を受け、結節に移行するのを防ぐことがたいせつです。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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声帯結節
せいたいけっせつ
慢性喉頭(こうとう)炎の一つで、声帯の前3分の1と残りの3分の2との境界部分が肥厚し、結節状に隆起する。両側の声帯にほぼ対称性にできることが多い。声を過度に使用する職業の人、とくに歌手にできやすいことから歌手結節とか謡人(ようじん)結節ということがある。そのほか、教師、アナウンサー、牧師、僧侶(そうりょ)などにも多くみられる。小児も大きな声を出して遊ぶのでできやすく、小児結節ともいう。原因でもっとも重大な因子は、声の過度な使用や間違った使い方、すなわち無理な発声をしたり、力を入れすぎたりすることである。過度の咳(せき)や咳払い、過度の飲酒や喫煙も誘因になる。おもな症状は嗄声(させい)(かれ声)である。初期には、ある高さの発声や過度に発声したときのみに声がかれるとか、長時間声を出していられない、のどが渇いていがいがした異物感があるなどの訴えが多い。かれ声はしだいにひどくなり、咳や咳払いを伴うようになる。
治療でもっとも重要なことは、声帯の安静である。歌手の場合は絶対的な沈黙を続けるため、入院して会話を避けることも行われる。初期の場合は声帯の安静と消炎剤の喉頭噴霧療法で治癒する。これで改善されない場合は、顕微鏡下の手術的切除を行う。再発を予防するためにも、声の過度な使用や間違った使い方を避け、発声方法を正す必要がある。
[河村正三]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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声帯結節 (せいたいけっせつ)
vocal cord nodule
発声時に振動の最も大きい声帯の前1/3の部位に,多くの場合両側性に生ずる小さい結節様の隆起を一般に声帯結節という。別名,謡人結節あるいは歌手結節などといわれるように,声を過度に使う職業の者によくみられる。表面の色調は周囲の正常粘膜のものとほとんど変わらないことが多く,通常は声帯ポリープとは肉眼所見からも区別される。また,幼児あるいは学童で声を乱用する場合にもみられ,これらは学童嗄声(させい)あるいは小児結節と総称されることがある。不適切な発声法や過度の発声が誘因とされているが,ある程度,結節が固定したものでは,手術的に除去することが必要である。しかし小児のものでは,多くは変声期ころまでに,十分な声の安静をはかることにより改善することが多く,手術療法は急ぐ必要はない。
執筆者:吉岡 博英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の声帯結節の言及
【声帯】より
…一方,気道系という観点からは,上気道,下気道の中で,声帯に挟まれた声門という部位はもっとも狭いところであるが,吸息時には声帯は外転し,声門抵抗を小さくして効率よく空気を下気道へ送り込む役割を担っている。
[声帯の病気]
声帯をおかす病気としては,[喉頭癌]や声帯炎,あるいは[声帯結節],[声帯ポリープ]といった腫瘤形成を主とした病気などのほかに,声帯を動かす神経の麻痺の一つである反回神経麻痺などがあげられる。これらの病気では,上述した声帯の諸機能が種々の程度で欠落ないし損傷されるので診断の助けとなる。…
※「声帯結節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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