変形性腰椎症と腰部脊柱管狭窄症(読み)へんけいせいようついしょうとようぶせきちゅうかんきょうさくしょう(その他表記)Lumbar spondylosis and Lumbar canal stenosis

六訂版 家庭医学大全科 の解説

変形性腰椎症と腰部脊柱管狭窄症
へんけいせいようついしょうとようぶせきちゅうかんきょうさくしょう
Lumbar spondylosis and Lumbar canal stenosis
(お年寄りの病気)

①変形性腰椎症

 変形性腰椎症は、加齢とともに進む腰椎の変形性変化で、頸椎と同じように、椎間板が傷んできて、椎体が硬くなり、骨棘ができます。進行の程度には個人差があり、症状の出方もさまざまです。痛みは、長距離歩行時、長時間同一姿勢をとっていた時、転んだり重い物を持ったあとなどに起こることが一般的です。こうした負担の直後に痛むこともありますが、高齢者の場合は2~5日くらいたってから痛むこともよくあります。

 通常、安静だけで徐々に改善しますが、痛みが強い場合やなかなか改善しない場合は、病院での診察がすすめられます。病院ではX線などの検査をして、感染症や腫瘍などほかの病気がないことを確かめます。また、神経圧迫の症状がないかを確かめて、温熱療法などの理学療法コルセット、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などの内服、外用などが治療に用いられます。

 慢性の痛みには、減量腹筋背筋の強化、腰や下肢ストレッチも有効です。変形性腰椎症では、手術をすることはありません。

②腰部脊柱管狭窄症

 変形性腰椎症の結果、脊髄からつながる腰椎レベルでの神経(神経線維の束で、馬の尻尾のようなので馬尾(ばび)と呼ぶ)や神経根の圧迫による腰痛や下肢の痛みや神経症状が現れることがあり、これを腰部脊柱管狭窄症といいます。

 腰部脊柱管狭窄症の症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)、両下肢のしびれ、冷感、知覚鈍麻(ちかくどんま)筋力の低下、膀胱の障害などです。間欠性跛行腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状で、決まった時間の歩行で下肢痛を生じ、少し休むとまた歩き始められる、というものです。

 間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)動脈硬化で下肢への血流が悪くなった状態)でも現れますが、腰部脊柱管狭窄症の場合では次のような特徴があります。

①下肢の筋力低下や知覚鈍麻を伴う。

②前傾姿勢での歩行や、自転車であれば痛みを生じない。

③疼痛出現後の休憩時間が数分間と短い。

前屈位(ぜんくつい)や、しゃがみこんだ状態での休息がとくに効果的である。

 日常生活では、重い物を急に持ち上げない、中腰の姿勢は避ける、物を持つ時はできるだけ体幹に近づけて持つ、腰部を冷やさない、無理に長距離歩行や長時間の立ち仕事をしないなどの注意が必要です。

 こうした症状に対して病院では、神経症状の確認、X線撮影、MRI撮影などを行い、神経症状の有無や程度、画像上の神経圧迫の有無を確かめます。

 腰部脊柱管狭窄症の治療は、神経の血行をよくするプロスタグランジン製剤やビタミンB12剤の内服、ブロック注射(腰やその周辺の神経の通り道への局所麻酔薬の注射)、消炎鎮痛薬などです。

 また、強い神経症状、すなわち知覚の完全麻痺、下垂足(かすいそく)(足首がまったく反らない状態)、尿閉(にょうへい)(尿がまったく出ない状態)や失禁などの強い膀胱障害が出た場合は、すぐに手術をする必要があります。時間がたつと手術で神経の圧迫を取り除いても、神経症状が治らないことがあるからです。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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