外輪船ともいう。推進用に外車paddle wheel(以前は外輪と呼ばれたが,現在,専門用語としては外車が広く用いられる)と呼ばれる水車のような装置を備えた船。19世紀の初頭にアメリカで実用化された蒸気船は,蒸気機関で動かされる外車船であり,R.フルトンがハドソン川で営業運航に成功したクラモント号も,ワットの蒸気機関を積んだ外車船であった。外車は水車に似た構造をしており,船内の蒸気機関の回転運動によって回し,これで水をかきながら船を前進させる。蒸気機関を用いた最初の外車船は,1802年スコットランドのW.サイミントンが造った船尾外車式のシャロッテ・ダンダス号Charlotte Dundasといわれている。初期の外車は水かき板が水車のように固定式であったが,これでは回転につれて水かき板が水面をひっかいて効率がよくないので,50年代に入ってつねに水面に直角に近い角度で出入りするように改良された。外車船には船の両側に水かきのように外車を取り付けた船側外車船と,船尾に外車が付いている船尾外車船とがある。船尾外車船は外洋航行には不向きで河川専用であり,現在でも観光船などに使われることがある(ミシシッピ川の観光船デルタ・クイーン号が有名)。船側外車船のほうはスクリュー船が一般化するまでの数十年間,帆船に代わって外洋で活躍した。外車船はやがて現在のスクリュー式推進器にとって代えられたが,このきっかけとしてよく引合いに出されるのは,1845年イギリス海軍の行った外車船アレクト号Alectoとスクリュー船ラトラー号Rattlerとの綱引実験である。ともに約800トン,200馬力のほぼ同じ大きさの軍艦で,この実験でスクリュー船ラトラー号が勝ち,約5ノットでアレクト号を引いたという。
執筆者:赤木 新介
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船の中央両側に水かき水車をもつか、船尾に1個の水かき水車を備えて、これを往復動蒸気機関によって回転させ推進する初期の汽船。外輪船ともいう。この方式で原動力に人力または動物の力を用いた船はエジプトや中国において古く存在した。蒸気力が18世紀に利用されるようになると、1788年にパトリック・ミラーPatrick Millerが、2隻の船体を並べて固定し、その間に水かき水車を備え、これを蒸気機関で動かすことを試みた。その後多くの人によりいろいろの方式が生まれた。しかし、やがて大部分は左右1対(つい)の水車の方式に落ち着き、河川用のものだけが船尾に取り付ける形となった。また水かきの面が水中では垂直を保つような偏心軸の方式なども考案された。
やがてスクリュー船が生まれ、1845年に外車船アレクト号(880トン)がスクリュー船でほとんど同馬力(220馬力)のラットラー号(880トン)に綱引きで負けてのち、外車船はその地位を急速にスクリュー船に譲るに至った。
[茂在寅男]
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