外車船(読み)ガイシャセン(その他表記)paddle wheeler

翻訳|paddle wheeler

デジタル大辞泉 「外車船」の意味・読み・例文・類語

がいしゃ‐せん〔グワイシヤ‐〕【外車船】

外車2推進器として取り付け、蒸気機関などで回転させて航行する船。スクリュー発明以前に用いられた初期汽船で、現在はミシシッピ川などにみられる。外車汽船外輪船

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精選版 日本国語大辞典 「外車船」の意味・読み・例文・類語

がいしゃ‐せんグヮイシャ‥【外車船】

  1. 〘 名詞 〙がいしゃきせん(外車汽船)
    1. [初出の実例]「寺泊湊賊旗赤白弐本柱外車船碇泊罷在候を」(出典:太政官日誌‐慶応四年(1868)五月二五日)

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改訂新版 世界大百科事典 「外車船」の意味・わかりやすい解説

外車船 (がいしゃせん)
paddle wheeler

外輪船ともいう。推進用に外車paddle wheel(以前は外輪と呼ばれたが,現在,専門用語としては外車が広く用いられる)と呼ばれる水車のような装置を備えた船。19世紀の初頭にアメリカで実用化された蒸気船は,蒸気機関で動かされる外車船であり,R.フルトンがハドソン川で営業運航に成功したクラモント号も,ワットの蒸気機関を積んだ外車船であった。外車は水車に似た構造をしており,船内の蒸気機関の回転運動によって回し,これで水をかきながら船を前進させる。蒸気機関を用いた最初の外車船は,1802年スコットランドのW.サイミントンが造った船尾外車式のシャロッテ・ダンダス号Charlotte Dundasといわれている。初期の外車は水かき板が水車のように固定式であったが,これでは回転につれて水かき板が水面をひっかいて効率がよくないので,50年代に入ってつねに水面に直角に近い角度で出入りするように改良された。外車船には船の両側に水かきのように外車を取り付けた船側外車船と,船尾に外車が付いている船尾外車船とがある。船尾外車船は外洋航行には不向きで河川専用であり,現在でも観光船などに使われることがある(ミシシッピ川の観光船デルタ・クイーン号が有名)。船側外車船のほうはスクリュー船が一般化するまでの数十年間,帆船に代わって外洋で活躍した。外車船はやがて現在のスクリュー式推進器にとって代えられたが,このきっかけとしてよく引合いに出されるのは,1845年イギリス海軍の行った外車船アレクト号Alectoとスクリュー船ラトラー号Rattlerとの綱引実験である。ともに約800トン,200馬力のほぼ同じ大きさの軍艦で,この実験でスクリュー船ラトラー号が勝ち,約5ノットでアレクト号を引いたという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外車船」の意味・わかりやすい解説

外車船
がいしゃせん

船の中央両側に水かき水車をもつか、船尾に1個の水かき水車を備えて、これを往復動蒸気機関によって回転させ推進する初期の汽船。外輪船ともいう。この方式で原動力に人力または動物の力を用いた船はエジプトや中国において古く存在した。蒸気力が18世紀に利用されるようになると、1788年にパトリック・ミラーPatrick Millerが、2隻の船体を並べて固定し、その間に水かき水車を備え、これを蒸気機関で動かすことを試みた。その後多くの人によりいろいろの方式が生まれた。しかし、やがて大部分は左右1対(つい)の水車の方式に落ち着き、河川用のものだけが船尾に取り付ける形となった。また水かきの面が水中では垂直を保つような偏心軸の方式なども考案された。

 やがてスクリュー船が生まれ、1845年に外車船アレクト号(880トン)がスクリュー船でほとんど同馬力(220馬力)のラットラー号(880トン)に綱引きで負けてのち、外車船はその地位を急速にスクリュー船に譲るに至った。

[茂在寅男]


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百科事典マイペディア 「外車船」の意味・わかりやすい解説

外車船【がいしゃせん】

外輪船とも。船尾または中央部両玄側につけた水車のような車輪(外車)の回転で推進する船。外車は初期の蒸気船に用いられた推進器で,水車の外周に半径方向に取り付けた板で水をかく。水かき板には固定のものと,回転中,翼が水へ入るとき,水をかくとき,水から出るとき,それぞれ最も合理的な角度に自動的に変わる羽打式とがある。外車が船側にあるものを船側外車船,船尾にあるものを船尾外車船という。現在ではスクリューの使えない浅水の河川,湖水などで遊覧船として使用されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外車船」の意味・わかりやすい解説

外車船
がいしゃせん
paddle steamer

外車つまり船体の両側もしくは船尾に設けた車輪式推進器で航走する汽船。蒸気船出現当初に主用され,推進効率の改善法も講じられたが,外車自体が舷側に突出し,また半分以上は水上に露出するために,波浪の高いときには不向きで,推進効率もスクリュープロペラより劣るため,今日ではほとんど姿を消した。

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