多度神社(読み)たどじんじゃ

精選版 日本国語大辞典 「多度神社」の意味・読み・例文・類語

たど‐じんじゃ【多度神社】

三重県桑名市多度町多度にある神社。旧国幣大社。主祭神は天津彦根命(あまつひこねのみこと)で桑名開拓の祖神。雄略天皇時代に社殿が創建されたと伝えられる。農・漁・工業の守護神として、また祈雨、風・水・火の難を除くのに霊験があるとして信仰される。多度大社。多度大神宮。お多度さん。

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デジタル大辞泉 「多度神社」の意味・読み・例文・類語

たど‐じんじゃ【多度神社】

三重県桑名市にある神社。祭神は天津彦根命あまつひこねのみこと天目一箇命あめのまひとつのみこと雨乞いに霊験ある神として信仰される。多度大神宮。多度大社。俗称、北伊勢大神宮。

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日本歴史地名大系 「多度神社」の解説

多度神社
たどじんじや

[現在地名]多度町多度

多度山の南麓、多度谷に鎮座する。「延喜式」神名帳の桑名郡一五座のうちに「多度神社名神大」とみえ、同書臨時祭の名神祭条にも「多度神社一座伊勢国」とあり、旧国幣大社。社域の東嶺の磐境から、明和七年(一七七〇)の豪雨の際、三〇面もの銅鏡が発見され、この磐境が最古の鎮座跡であろうと推定されている点や、別宮の一目連いちもくれん神社の社殿に扉も簾もなく、峡間の岩壁から流れ出る水が社殿の床下をくぐり抜けるような配置から考えて、山中の磐境や背後の山自体を神体とした古い祭祀法を伝えている神社である。現在の社殿の配置は、左側に正殿があり天津彦根命を祀り、右側の相殿には一目連を祀って多度両宮と称している。

正殿の祭神天津彦根命は「新撰姓氏録」右京神別に「桑名首、天津彦根ノ男、天久之比乃命之後也」とみえ、当地方開拓の桑名首の祖先神であり、天照大神の御子である。別宮一目連神社は天津彦根命の御子神である天目一箇命を祀っている。天目一箇命は「古語拾遺」によれば伊勢忌部の祖で、金属工業の祖神である。民間では片目の竜神で一目竜とよび干天に慈雨を恵む神で雨乞の神、風難除けの神として農・漁民の間に信仰され、第二次世界大戦前には絵馬堂に船主たちの奉納した一目連の天駆ける絵馬がたくさん懸けてあったという。また摂社美御前うつくしごぜん社が両宮の左手前にあり、祭神市杵島姫命は天津彦根命の妹神。民間には耳の病・婦人病に霊験ありとする信仰があり、穴のあいた自然石を奉納して全快を祈る風習がある。なお祭神に関しては「桑名志」では「祭神、天津彦根命、相殿面足命、惶根命也。マタ一目連社、多度権現社ノ右ニアリ。

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改訂新版 世界大百科事典 「多度神社」の意味・わかりやすい解説

多度神社 (たどじんじゃ)

三重県桑名市の旧多度町多度に鎮座。天津彦根命をまつり,別宮一目連(いちもくれん)神社は天目一箇(あめのまひとつ)命をまつる。天目一箇命は天津彦根命の子,桑名首の祖という。社殿東方嶺上に古代祭祀遺跡があるが,創建年代不詳。763年(天平宝字7)に多度神宮寺が創建された。782年(延暦1)従五位下,859年(貞観1)正月正三位,同2月従二位,863年正二位に叙され,887年(仁和3)奉幣にあずかり,延喜の制で名神大社。北伊勢の大社として朝野の崇敬をうけ,元亀年中(1570-73)織田信長の兵火にあい,神宮寺も焼亡したが,桑名藩主本多忠勝が再興,以後累代の藩主の保護をうけ,1867年(慶応3)諸大名の寄進で社殿を造営した。旧国幣大社。例祭は5月4,5日で上馬(あげうま)神事は雄壮さで有名。一目連神社では11月8日にふいご祭が行われる。宝物に〈神宮寺伽藍縁起幷資財帳〉や経塚の遺物とみられる銅鏡,神宮寺跡出土の金銅五鈷鈴などがある。
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百科事典マイペディア 「多度神社」の意味・わかりやすい解説

多度神社【たどじんじゃ】

三重県多度町(現・桑名市)に鎮座。旧国幣大社。天津彦根神をまつる。雄略朝の鎮祭と伝える。延喜式内の名神大社。祭神は水神・農耕神としての信仰が厚い。例祭は5月4日で上馬(あげうま)神事が行われる。神宮寺伽藍(がらん)縁起并資財帳や銅鏡などの重要文化財がある。
→関連項目桑名[市]多度[町]

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世界大百科事典(旧版)内の多度神社の言及

【猪飼】より

…力尾(ちからお),北猪飼とともに猪飼三ヵ村と呼ばれたこともある。近隣に《延喜式》神名帳の名神大社多度神社および同神宮寺をもち,その神領地として祭祀等にかかわった。1794年(寛政6)の《多度神大祭御神事規式簿》によれば,5月5日の大祭に際し,猪飼三ヵ村を含む7ヵ村の氏子が往古の神領民として神事を勤仕している。…

【小串氏】より

…範行の子孫の別流は伊勢国桑名郡猪飼の土豪として勢威を張ったが,小串詮通のとき織田信長に滅ぼされたという。この一族は多度神社の神官でもあった。【青山 幹哉】。…

※「多度神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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