日本大百科全書(ニッポニカ) 「多目的ダム」の意味・わかりやすい解説
多目的ダム
たもくてきだむ
multipurpose dam
ダム建設の目的には洪水調節や上水道、工業、灌漑(かんがい)、水力発電などの用水の供給、舟運の改善などがあるが、二つ以上の目的に供するために建設されるダムをいう。一つだけの目的のために建設されるダムは専用ダムという。ダムの建設に適した地点に限りがあり、またダムの建設には多額の費用がかかるので、ダムを効率的に利用するために多目的ダムが計画される。多目的ダムの計画にあたっては、各目的間の調整をし、費用分担を決め、貯水池の容量配分を行い、貯水池の効率的な運用を図ることが必要になる。2011年版ダム年鑑(日本ダム協会)によると、日本には多目的ダムは773あり、ダム総数の約28.5%に当る。洪水調節と上水道、灌漑、発電の用水供給、維持流量供給のために築造された八木沢ダム(アーチダム、群馬県利根川、高さ131メートル、1967年竣工)、洪水調節と上水道、工業、灌漑、発電の用水供給のための岩屋ダム(傾斜土質遮水壁型ロックフィルダム、岐阜県木曽川水系馬瀬川、高さ127.5メートル、1976年竣工)、洪水調節と上水道、工業、発電の用水供給のための手取川(てどりがわ)ダム(中央土質遮水壁型ロックフィルダム、石川県手取川、高さ153メートル、1979年竣工)などがある。
[鮏川 登]