大倉喜八郎(読み)オオクラキハチロウ

デジタル大辞泉 「大倉喜八郎」の意味・読み・例文・類語

おおくら‐きはちろう〔おほくらキハチラウ〕【大倉喜八郎】

[1837~1928]実業家。新潟の生まれ。江戸で乾物店・銃砲店を開業、明治6年(1873)に大倉組商会を創立。軍の御用商人として巨利を得、大倉財閥形成した。

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精選版 日本国語大辞典 「大倉喜八郎」の意味・読み・例文・類語

おおくら‐きはちろう【大倉喜八郎】

実業家。越後に生まれ、幕末江戸で鉄砲店を開業。明治六年(一八七三大倉組商会を設立。軍需品調達の御用商人として巨富を積み、大倉財閥を形成。天保八~昭和三年(一八三七‐一九二八

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改訂新版 世界大百科事典 「大倉喜八郎」の意味・わかりやすい解説

大倉喜八郎 (おおくらきはちろう)
生没年:1837-1928(天保8-昭和3)

実業家。大倉財閥の創設者。越後国新発田(しばた)の商家に生まれ,18歳の時,商売で身を立てようと江戸に出て鰹節店店員となる。1867年(慶応3)に神田和泉橋通に銃砲店を開業し,幕末・維新の動乱を利用して販路を拡大した。明治維新後は欧米の経済社会を視察したうえ,73年に大倉組商会を設立して外国貿易および用達事業に乗り出し,政治家や軍部と結びつき,台湾出兵西南戦争,日清戦争,日露戦争の軍需物資調達や輸送で巨利を得た。この間,建設事業にも着手するとともに,93年大倉組商会は合名会社大倉組に改組され,大正期に入ると,大倉商事大倉鉱業大倉土木の直系3社を中核とする大倉財閥の体制を確立していった。当時の企業家のなかでは中国大陸への事業進出にきわめて積極的であり,1911年満州(中国東北部)に製鉄事業の本渓湖煤鉄公司コンス)を設立したのをはじめ,中国や朝鮮に数多くの事業をおこした。中国軍閥との関係も深く,政治的借款もしばしば供与している。また大倉は渋沢栄一と協力して東京商法会議所(現,東京商工会議所)設立に尽力するなど財界活動にも力を注ぎ,東京電灯,帝国ホテル,大日本麦酒,日本皮革,日清製油など多数の会社の設立に関与し,出資した。1900年に大倉商業学校(1920年大倉高商。現,東京経済大学),1917年には東洋古美術を展示した大倉集古館も設立している。
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朝日日本歴史人物事典 「大倉喜八郎」の解説

大倉喜八郎

没年:昭和3.4.22(1928)
生年:天保8.9.24(1837.10.23)
明治大正期の実業家。大倉財閥の創設者。越後国北蒲原郡新発田(新潟県新発田市)生まれ。安政1(1854)年江戸に出て,幕末維新の動乱期に銃砲の販売で名を馳せた。そののち,新政府の御用商人として軍需品の調達・輸送,鉄道・建物関係の土木建設工事などに従事し,蓄財していった。早くから貿易事業に着目し,明治6(1873)年大倉組商会を設立。7年ロンドンに支店を設置してヨーロッパとの直貿易に乗り出し,次いで朝鮮との貿易にも進出した。明治期の実業家らしく,東京電灯,帝国ホテルその他数多くの企業の設立に参画するとともに役員に就任した。明治末以降,中国大陸への投資に乗り出し,大正期にこれを積極化しているが,このうち清国政府との合弁事業である本渓湖煤鉄有限公司による炭鉱・鉄鉱山の経営とそれに立脚する製鉄事業はその中心をなした。大正6(1917)年には合名会社大倉組を持株会社とし,大倉商事,大倉土木(大成建設),大倉鉱業を直系3社とするコンツェルン機構を形成した。明治31(1898)年には大倉高等商業学校(東京経済大学)を設立している。<参考文献>小林正彬『政商の誕生』,中村青志「大正・昭和初期の大倉財閥」(『経営史学』15巻3号),大倉財閥研究会編『大倉財閥の研究』

(小早川洋一)

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百科事典マイペディア 「大倉喜八郎」の意味・わかりやすい解説

大倉喜八郎【おおくらきはちろう】

実業家。越後国新発田の人。大倉財閥の創設者。幕末の江戸で銃砲店を営んで成功,次いで明治維新後陸海軍の御用商人として産を成した。のち1873年貿易商として大倉組商会を設立,外国貿易,用達事業を発展させ,政商としての基礎を築いた。のち台湾出兵,西南戦争,日清・日露戦争など軍需品用達商人として戦争のたびに巨利を得た。また中国満州方面にも事業を拡大した。帝国劇場,帝国ホテル,大倉集古館,大倉商業学校(現在の東京経済大学)なども設立。
→関連項目大倉商事[株]ホテルオークラ[株]大和楽

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大倉喜八郎」の意味・わかりやすい解説

大倉喜八郎
おおくらきはちろう
(1837―1928)

政商的実業家。大倉財閥の創設者。越後国(えちごのくに)(新潟県)新発田(しばた)の名主の家に生まれる。18歳で江戸に出て、かつお節店の店員となる。1865年(慶応1)銃砲店を開業し、幕末、維新の動乱に乗じて販売を拡大した。維新後は欧米視察のうえ、1873年(明治6)大倉組商会を設立して貿易および用達事業に乗り出し、台湾出兵、西南戦争、日清戦争(にっしんせんそう)、日露戦争の軍需物資調達で巨利を得た。この間、大倉組商会は合名会社大倉組に改組され、大正期には大倉商事、大倉鉱業、大倉土木の3社を事業の中核とする大倉財閥の体制を確立していった。とくに中国大陸への事業進出に積極的で、中国軍閥との関係も深かった。また渋沢栄一と協力して東京商法会議所設立に尽力するなど財界活動にも力を入れ、東京電燈(でんとう)はじめ多数の会社の設立に関与した。大倉高等商業学校(現東京経済大学)や大倉集古館も設立している。

[中村青志]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大倉喜八郎」の意味・わかりやすい解説

大倉喜八郎
おおくらきはちろう

[生]天保8(1837).9.24. 新発田
[没]1928.4.5. 東京
明治・大正期の実業家,大倉財閥の創設者。新潟の農家に生れ,江戸に出て商家に奉公し,慶応1 (1865) 年独立して銃砲店を開いたが,たまたま明治維新に際会して大当りをとり,政府からその存在を認められた。明治5 (72) 年欧米諸国の商業事情を視察し,1873年大倉組商会を設立して貿易に進出,同商会が後年の財閥形成の中核となった。そして台湾征伐,西南戦争,日清・日露両戦争と相次ぐ戦争のたびに政府から軍用品の調達を命じられて巨利を得て発展,また満州における投資活動も積極的に推進した。晩年には東京電灯,帝国ホテル,札幌麦酒 (現サッポロビール) など数多くの会社の起業に参画し,財界の巨頭の一人として活躍した。また大倉商業学校 (1900設立。現東京経済大学) や美術館大倉集古館 (17) の設立者でもある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大倉喜八郎」の解説

大倉喜八郎 おおくら-きはちろう

1837-1928 明治-大正時代の実業家。
天保(てんぽう)8年9月24日生まれ。江戸で銃砲店を開業,戊辰(ぼしん)戦争で新政府軍に武器をうり巨利をえた。明治6年大倉組商会を設立し,大正にはいって大倉財閥の体制を確立した。東京電灯,大日本麦酒(ビール),帝国ホテルなど数おおくの会社設立に関与。大倉商業学校(現・東京経済大),大倉集古館を創設した。昭和3年4月22日死去。92歳。越後(えちご)(新潟県)出身。
【格言など】私は商人でございます。金を儲けるのが仕事でございます(新政府軍に鉄砲を売ったことを難詰されて)

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旺文社日本史事典 三訂版 「大倉喜八郎」の解説

大倉喜八郎
おおくらきはちろう

1837〜1928
明治・大正時代の実業家
越後(新潟県)の豪商出身。江戸に出て銃砲店大倉屋を開き,戊辰 (ぼしん) 戦争の際,官軍御用達をつとめ政商となる。以来軍需品御用達商人として戦争のたびに巨利を得,1893年合名会社大倉組に発展。1911年株式会社組織として大倉組(合名)を吸収し,大倉財閥を形成した。また日本最初の私立美術館としての大倉集古館,東京経済大学の前身の大倉高等商業学校を創設した。

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世界大百科事典(旧版)内の大倉喜八郎の言及

【大成建設[株]】より

…大手5社の一つ。幕末に越後から上京し1867年(慶応3)に大倉銃砲店を開いた大倉喜八郎が,73年(明治6)に外国貿易を営む大倉組商会(組合組織)を設立,貿易業務の一方で政府の命により建設工事その他の請負を行ったのが同社の前身。この時期,新橋停車場の一部や鹿鳴館などの工事を手がけた。…

※「大倉喜八郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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