翻訳|talent
本来は才能,人材を意味する言葉であるが,転じて放送用語として,放送への出演を職業とする人々を指すようになった。放送専門の芸能人の誕生は,1932年NHK東京中央局が琵琶,清元,漫談その他の10種目に新人を募集,19名がデビューしたことに始まる。マイクテストに3回合格した者が職業芸能人としてランクされた。41年には〈放送劇団〉の第1期生が公募され,加藤道子,巌(いわお)金四郎ら31名が合格した。放送劇団は,声だけでの演技を求められるラジオ放送のための専門劇団として設立されたもので,第2次大戦後〈声優〉の名で呼ばれる人たちの多くがこの養成所から育った。黒柳徹子,横山道代,幸田弘子らもここの出身である(第5期生からはテレビ放送向けの養成もなされた)。タレントという呼び名が生まれるのは,51年の民放ラジオ発足後であり,さらにそれが日常語として定着するのは,53年のテレビジョン本放送開始後である。現在ではタレントといえば,テレビタレントのことを指すのが普通である。
タレントは,その前身ともいえる職業芸能人をうけついで,芸能人的性格を色濃くおびるが,出身は一様でなく,アナウンサーや放送作家からの転身をはじめ,作家,学者,新聞記者らの兼業,さらに歌手兼俳優など,タレントはその職業を超えて,視聴者たちと同時代を呼吸する自己の〈素顔〉を提示する。その演技力にもまして,日常人としての存在感がタレントの要件である。視聴者はブラウン管に映る彼らの虚像の〈向こう〉に,植木等や青島幸男らの実像を求める。タレントはブラウン管にその顔や姿を映し出すとき,そこに彼ら自身の,同時代への見識や感じ方を提示しなければならない。その虚実の交錯にタレントのすぐれて現代的な性格があり,またそのことでタレントは,テレビジョンの機能を活性化する。
執筆者:江藤 文夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…小麦180粒の質量で決めた単位の呼名は,シェケルshekel,シクルsicle,シクルスsiclusなどと地域により異なり(聖書の邦訳ではシケル),実体も8~11gほどの幅を示していた。そして,このシェケルの倍量としてタレントtalent,ミナmina(またはミネmine)という単位が使われたが,近代西欧の衡であるポンドやキログラムも,どこかでミナの跡を引いているといわれる。それはともかくとして,イギリスの伝統的な単位グレインgrain(日本ではグレン,ゲレーンともいう)は文字どおり穀粒によるものであり,古代インドの衡の一つであるグーニャguñjaも,ある種の豆(一説ではトウアズキabrus precatorius)の種子によるものと解されている。…
…小麦180粒の質量で決めた単位の呼名は,シェケルshekel,シクルsicle,シクルスsiclusなどと地域により異なり(聖書の邦訳ではシケル),実体も8~11gほどの幅を示していた。そして,このシェケルの倍量としてタレントtalent,ミナmina(またはミネmine)という単位が使われたが,近代西欧の衡であるポンドやキログラムも,どこかでミナの跡を引いているといわれる。それはともかくとして,イギリスの伝統的な単位グレインgrain(日本ではグレン,ゲレーンともいう)は文字どおり穀粒によるものであり,古代インドの衡の一つであるグーニャguñjaも,ある種の豆(一説ではトウアズキabrus precatorius)の種子によるものと解されている。…
※「タレント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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