大賀九郎左衛門(読み)おおがくろうざえもん

改訂新版 世界大百科事典 「大賀九郎左衛門」の意味・わかりやすい解説

大賀九郎左衛門 (おおがくろうざえもん)
生没年:?-1641(寛永18)

福岡藩の初期に重きをなした御用商人朱印船貿易家。大賀家は豊前中津の出身で大神氏の子孫といわれ,黒田氏の中津より福岡転封にともない,博多に移った。父は甚四郎信好といい,善兵衛(上大賀),九郎左衛門(中大賀),惣右衛門(下大賀)の3兄弟とも,福岡藩の特別の格式を与えられた博多豪商であった。九郎左衛門は1607年(慶長12)に暹羅(シヤム)に朱印船貿易を行っている。博多商人は豊臣氏に近く,江戸幕府から敬遠されていたが,その中で朱印状を与えられたのはこの九郎左衛門が唯一の人物であった。またその後長崎の末次平蔵船の客商として東南アジア貿易に従事する一方,ポルトガル船に投銀投資を行うなど多彩な活躍をしていたが,2代目九郎左衛門に子供がなく,かつその妻が伊藤小左衛門(朝鮮との密貿易で処刑された)の娘であったことから,中大賀はみずから家を絶った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大賀九郎左衛門」の意味・わかりやすい解説

大賀九郎左衛門
おおがくろうざえもん
(?―1641)

江戸前期の海外貿易家。法名道句、諱(いみな)は信房。豊後国(ぶんごのくに)の土豪大神(おおが)氏の子孫といわれる。父甚四郎信好は、黒田氏の中津より福岡への転封に伴い博多に移住。子の善兵衛(上(かみ)大賀)、九郎左衛門(中(なか)大賀)、惣右衛門(下(しも)大賀)の3兄弟は、いずれも福岡藩御用達商人として特別の格式を与えられた。九郎左衛門は、1607年(慶長12)にシャム行きの渡航朱印状を幕府から入手し、朱印船を派遣している。また末次船の客商や、ポルトガル船への「投銀(なげがね)」、糸割符分国配分の博多小割りを受けるなど、さまざまな貿易活動に参加した。しかしその後、密貿易が発覚した伊藤小左衛門(いとうこざえもん)との姻戚関係にあったため、中大賀は断絶した。

[小山幸伸]

『武野要子著『博多町人 栄華と経営手腕』(1992・中央経済社)』

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朝日日本歴史人物事典 「大賀九郎左衛門」の解説

大賀九郎左衛門

没年寛永18.9.21(1641.10.25)
生年:生年不詳
江戸前期の朱印船貿易家。大賀甚四郎信好の子で,大賀氏は大神氏の子孫といわれ,豊後国(大分県)の土豪を祖先とする。慶長5(1600)年,甚四郎は黒田長政の転封にともない豊後中津から博多に移り,その築城を助ける。このとき,大賀と改姓した。九郎左衛門には兄の善兵衛,弟惣右衛門がおり,それぞれ中大賀,上大賀,下大賀といった。3人とも博多豪商となったが,九郎左衛門は博多商人の拠点である長崎五島町に居住し,同12年徳永宗也と共に暹羅に朱印船貿易を行い,同15年には末次宗得ら博多商人6人と共同出費による「投銀」(内外貿易商人への金融)に加わり,ポルトガル人カピタンへの総額150貫目の貸付のうち13貫目を担うなど,多彩な貿易を行った。だが,2代目九郎左衛門の妻が,密貿易家伊藤小左衛門の娘であったため,この中大賀は絶えた。<参考文献>武野要子『藩貿易史の研究』

(小山幸伸)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大賀九郎左衛門」の意味・わかりやすい解説

大賀九郎左衛門
おおがくろうざえもん

[生]?
[没]寛永18(1641).博多
江戸時代初期の貿易家。甚四郎信好の次男,名は信次。父の志を受継ぎ貿易に従事。長崎五島町に長崎屋敷をおき,慶長 12 (1607) 年シャムに朱印船を派遣。寛永 15 (38) 年カピタンに多額の貸付けを行なった。島井宗室神谷宗湛らとともに博多三傑といわれた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大賀九郎左衛門」の解説

大賀九郎左衛門 おおが-くろうざえもん

?-1641 江戸時代前期の商人。
大賀信好の次男。長崎五島町の長崎屋敷で輸入品をかいしめて貿易商をいとなむ。慶長12年に朱印船をシャムにだして,蘇木,伽羅(きやら)などを輸入した。寛永15年博多商人数名とくんで,外国の貿易商らに銀の貸し付けをおこなった。寛永18年9月21日死去。名は信房。号は道句。

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