芦屋釜と並び称される関東の代表的茶の湯釜で,下野国(栃木県)佐野天明の地で鋳造されたものの総称。天命釜とも書く。地名の天命が天明に改まったのは1633年(寛永10)彦根領となって以来という。相模小田原(一説に栃木県大田原)にも天明釜の分派があり,小田原天猫,猫天明などと呼ばれている。桃山時代以前のものを特に古天明と呼ぶ。伝承では,天慶の乱(939)のころ藤原秀郷が河内国丹南から召した鋳物師が金屋寺岡の地で軍器を鋳造していたが,1081年(永保1)のころ佐野に移入した鋳物師是閑が湯釜を鋳たのが天明釜のはじめという。天明釜の特色は,地紋のあるものは少なく無地釜が多いことで,そのため肌作りには挽肌(ひきはだ),弾肌(はじきはだ),荒肌など工夫をこらしており,特に弾肌は泥土を手で弾きつけて肌を作るもので天明釜独特のものである。紀年銘最古の作は文和元年(1352)極楽寺銘の尾垂釜である。
執筆者:大角 幸枝
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…真形釜が多く,古いものは羽釜の形式をとっている。天明釜は平安時代からの鋳物製作を継承した関東を代表する釜で,室町時代には盛んに京都に運ばれ,珍重されたと考えられる。無地釜が多く,早くから羽を持たない釜が作られた。…
…一方,茶の湯の流行とともに,茶の湯釜の鋳造も盛んとなった(釜)。福岡県遠賀川河口の芦屋で作られた芦屋釜と,栃木県佐野天明(てんみよう)で作られた天明釜はとくに名高い。芦屋釜はしっとりした鉄の地肌と風雅な鋳出文様に特色があり,天明釜は荒々しい地肌と形姿のおもしろさに特色がある。…
※「天明釜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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