芦屋釜(読み)あしやがま

改訂新版 世界大百科事典 「芦屋釜」の意味・わかりやすい解説

芦屋釜 (あしやがま)

筑前国福岡県遠賀川の河口芦屋の里で鋳造された茶の湯釜総称桃山時代以前のものをとくに古芦屋と呼ぶ。茶の湯釜の起源は建仁年間(1201-04)に明恵上人が芦屋の鋳物師に鋳させたのに始まると,西村道冶の著した《釜師之由緒》にみえるが,天明釜の方が古いとする説もあり,つまびらかでない。茶の湯の隆盛に伴い,室町時代には名物釜が盛んにつくられた。芦屋釜の特色は引中型(ひきなかご)を用いていること,真形(しんなり)釜が多く,鐶付(かんつき)は鬼面を用い,地肌は滑らかで鯰肌(なまずはだ)が多く,陽鋳の絵画的地紋で飾られていることである。文様としては松竹梅,花鳥,馬,山水図等,当時の水墨画の趣を取り入れており,雪舟の下絵と称する釜もある。最盛期である室町時代末期の代表的釜師に大江宣秀があり,唯一の紀年銘釜として根津美術館蔵の《松梅図真形釜》(永正14年(1517)銘)をのこしている。時代が下ると伊勢や越前,播州にも鋳工が移り住み,伊勢芦屋,越前芦屋,播州芦屋を製作した。
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百科事典マイペディア 「芦屋釜」の意味・わかりやすい解説

芦屋釜【あしやがま】

葦屋釜とも記す。福岡県芦屋で作られた茶釜。桃山時代以前のものを古芦屋という。鎌倉末〜室町期に全盛,室町末期の代表的釜師に大江宣秀がいる。形式は真形(しんなり)が最も多い。地肌(はだ)がなめらかで,地文鮮麗なのが特色。
→関連項目芦屋[町]京釜天明釜西村道仁

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「芦屋釜」の意味・わかりやすい解説

芦屋釜
あしやがま

鎌倉時代から桃山時代にかけて、筑前(ちくぜん)国(福岡県)遠賀(おんが)川河口の芦屋津で鋳造された茶釜の総称。形は真形(しんなり)、鐶付(かんつき)は鬼面(きめん)、肌は絹肌か鯰(なまず)肌を特徴とする。州浜、松、梅、竹、鶴(つる)、馬などの地紋もある。京釜の出現により、江戸時代初期には衰滅した。天命(てんみょう)釜と並ぶ古作釜の代表。

[筒井紘一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「芦屋釜」の意味・わかりやすい解説

芦屋釜
あしやがま

茶の湯釜の一種。福岡県遠賀郡芦屋町で鋳造された茶釜。生産は鎌倉時代末期から始り,博多,播磨,伊勢などにもその分派がある。室町時代中期頃が最盛期ですぐれた作品を生んだが,桃山時代に京釜の盛行に押されて衰退し,江戸時代初期に終滅した。地肌がなめらかで,絵画的な文様を鋳出すのが特色。

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旺文社日本史事典 三訂版 「芦屋釜」の解説

芦屋釜
あしやがま

筑前国(福岡県)遠賀川河口付近の芦屋で鋳造された茶の湯釜
室町時代から安土桃山時代にかけてが全盛。東山時代の作品は特に珍重される。

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世界大百科事典(旧版)内の芦屋釜の言及

【釜】より

… 産地としては,筑前芦屋と下野天明(てんみよう)が古くから知られる。芦屋釜は大内氏歴代の保護により栄えたが,大内氏が滅び京釜が隆盛をみるとしだいに衰退し,江戸時代初期には終滅した。芦屋の鋳物師には大江,太田,藤原などの家系がある。…

【金属工芸】より

…一方,茶の湯の流行とともに,茶の湯釜の鋳造も盛んとなった()。福岡県遠賀川河口の芦屋で作られた芦屋釜と,栃木県佐野天明(てんみよう)で作られた天明釜はとくに名高い。芦屋釜はしっとりした鉄の地肌と風雅な鋳出文様に特色があり,天明釜は荒々しい地肌と形姿のおもしろさに特色がある。…

※「芦屋釜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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