改訂新版 世界大百科事典 「太一教」の意味・わかりやすい解説
太一教 (たいいつきょう)
Tài yī jiào
中国の道教の宗派の一つ。12世紀中葉,道士蕭抱珍(しようほうちん)によって開かれた。太一教の名は蕭抱珍が〈太一三元法籙〉というおふだを伝えたことに由来する。蕭抱珍の後,宗師となった韓道煕,王志冲(虚寂)などは全て蕭姓を名のったが,これは同時代の全真教や真大道教には見られぬ特徴である。その教法の中心は,始祖蕭抱珍が女性の妊娠中の苦痛を,丹書を服用させることによって和らげたり,第3祖の蕭志冲が蝗害(こうがい)を除き,符水によって治病したりした点から,おふだによる治病,消災にあったと理解され,シャマニズム的要素を色濃くもっている。また第4祖の蕭輔道は金・元交替の際の戦乱で廃墟に放置されたままであった民衆の遺骸を一ヵ所に集めて祭祀を行い,丁重に葬ったとされるが,これは民衆の心の収攬にあずかって力があったであろう。太一教は開祖の時以来,金の皇室と結びつき,蕭輔道の時には元の皇室とも結びついて教勢を張ったが,元より後のことは不明である。
執筆者:砂山 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報