太一教(読み)たいいつきょう(その他表記)Tài yī jiào

改訂新版 世界大百科事典 「太一教」の意味・わかりやすい解説

太一教 (たいいつきょう)
Tài yī jiào

中国の道教宗派の一つ。12世紀中葉,道士蕭抱珍(しようほうちん)によって開かれた。太一教の名は蕭抱珍が〈太一三元法籙〉というおふだを伝えたことに由来する。蕭抱珍の後,宗師となった韓道煕,王志冲(虚寂)などは全て蕭姓を名のったが,これは同時代の全真教や真大道教には見られぬ特徴である。その教法の中心は,始祖蕭抱珍が女性の妊娠中の苦痛を,丹書を服用させることによって和らげたり,第3祖の蕭志冲蝗害こうがい)を除き,符水によって治病したりした点から,おふだによる治病,消災にあったと理解され,シャマニズム的要素を色濃くもっている。また第4祖の蕭輔道は金・元交替の際の戦乱廃墟に放置されたままであった民衆遺骸を一ヵ所に集めて祭祀を行い,丁重に葬ったとされるが,これは民衆の心の収攬にあずかって力があったであろう。太一教は開祖の時以来,金の皇室と結びつき,蕭輔道の時には元の皇室とも結びついて教勢を張ったが,元より後のことは不明である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太一教」の意味・わかりやすい解説

太一教
たいいつきょう
Tai-yi-jiao

中国,金の天眷年間 (1138~40) に,河南の汲県で道士蕭抱珍 (しょうほうちん) が創始した道教教団。真大道教,全真教と並ぶ新道教の一つ。「太一三元法 籙」という術をもって民衆を救済したので,太一教の名がある。「太一」とは天神,「三元」とは上元天官,中元地官,下元水官の三神,「法 籙」とはお札のこと。お札や祈祷で病気や災厄を救うことを主とし,呪術的色彩が強いが,他方で中道を尊び,飲酒,妻帯の禁などの戒律を有したが,それ以前の道教が重んじていた金丹 (→金丹道 ) ,尸解,あるいは導引や房中 (→房中術 ) などの養生法 (→養生説 ) は説かなかった。各地に太一堂という会堂を建て,急速に信徒をふやし,金の王室の保護を得た。4祖蕭輔道のときに元の王室の保護を受けて発展したが,8祖以後は法系も絶えて,教団は消滅したようである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太一教」の意味・わかりやすい解説

太一教
たいいつきょう

新道教の一派。中国、金代の蕭抱珍(しょうほうちん)が天眷(てんけん)年代(1138~40)に、神仙から『太一三元の法籙(ほうろく)』の垂示を得、河南省汲(きゅう)県で開いた教派。教説は符ろく(おふだ)や符水(ふすい)(霊水)によって人々の病気と災難を救い、穏和な社会の回復を願うものであったようで、比較的古い道教の色彩を残している。金・元の帝王から保護を受けたのも、おそらく太一教の符呪(ふじゅ)の儀法が、北方民族特有のシャーマンの祭儀と共通するものがあったからであろう。教派の衰亡の時期は明らかではないが、13世紀末には文献のうえから姿を消している。

[秋月観暎]

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